日本酒「獺祭」で知られる旭酒造が、その原料となる酒米「山田錦」のコンテスト「最高を超える 山田錦プロジェクト2020」を開催。1月23日にグランプリと準グランプリの発表会が行われた。グランプリには福岡県朝倉市の北嶋将治さんが選ばれ、北嶋さんの米は60俵が3,000万円で同社に買い取られる。

  • 「最高を超える 山田錦プロジェクト2020」開催の様子

おいしい酒と農業の発展を願い、昨年から始動

獺祭は原料の酒米に山田錦のみを使用しており、旭酒造は山田錦の品質を重んじている。このプロジェクトは、自然を相手にした地域での共同作業が必要とされる米作りにおいて、高齢化や思い切ったチャレンジがしづらい問題を踏まえ、2019年に初開催された。米農家の様々な試行錯誤や交流、日本の農業が活発になることを願って開かれている。

前回は、グランプリに対して相場の約25倍となる50俵2,500万円の買取金額が提示されたことで大きな話題となった。2回目となる今回は、それをさらに上回る60俵3,000万円でのグランプリ米の買取を提示。全国を対象に募集し、127名から63点が出品されていた。

1月23日に行われた発表会は、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、オンライン形式で開催。その様子はYoutube LIVEで獺祭ファンらにも公開された。

冒頭の挨拶で、桜井一宏社長は「今年は審査員の方々に、グランプリが出なくてもいいので厳しく選んでいただくよう伝え、それほど高品質の米を求めました。その中でこうしてグランプリ、準グランプリを選出でき、皆様の努力に感謝しています」と話した。

  • 旭酒造の桜井一宏社長「皆様の努力に感謝」

福岡県の北嶋将治さんがグランプリに

審査は「粒張り」「粒ぞろい」「心白」「被害粒」「着色」「色択」の項目をもとに目審で行われ、まず予審で8点が決審に進み、8点の中からグランプリと準グランプリが選ばれた。その結果、グランプリに北嶋将治さん(福岡県朝倉市・ウイング甘木)、準グランプリには紙本進さん(栃木県下野市・山田錦栽培研究所)が輝いた。

「最高を超える 山田錦プロジェクト2020」審査項目

  1. 「粒張り」十分に成長し、丸々とした厚みがあるか
  2. 「粒ぞろい」大小がなく、均一な粒になっているか
  3. 「心白」心白は丸々として大きく、中央に位置しているか
  4. 「被害粒」粒表面が緑色をしていたり、砕けたりした粒が混ざっていないか
  5. 「着色」粒面の全部または一部が着色した粒が混ざっていないか
  6. 「色沢」表面に艶があるか。透明部分は濁っていないか

発表会ではオンラインで各受賞者が登壇。グランプリの北嶋さんは、「7月の長雨や1週間で2つの台風が来るなどの苦労もありましたが、胸を張れる賞をいただけた。重みを感じており、また来年に向けて頑張りたい」と話した。

  • 「最高を超える 山田錦プロジェクト2020」グランプリに輝いた北嶋将治さん(福岡県朝倉市・ウイング甘木)

準グランプリの紙本さんも「うれしいとしか言いようがない。日照時間の短さなど難しい気候も多かったが、先輩などに教えをもらい、栽培の仕方を考えた」と、受賞の喜びを語った。

桜井社長は「グランプリ、準グランプリとも予審の段階から審査員を唸らせる美しさだった。見栄えが美しく、作る側としては、磨いた時に割れにくい、機械の目で見てもヒビの少ないもので印象的だった」と両者の山田錦の素晴らしさを絶賛。桜井博志会長は「酒蔵にとって米は本当に大切。受賞をひとつの励みとしていただき、今後も一緒に頑張っていきたい」と話した。

  • 旭酒造の桜井博志会長「酒蔵にとって米は本当に大切」

昨年グランプリは過去最高額の1本84万円で落札

昨年のグランプリに輝いた米で作られた獺祭は、香港でのオークションに出品され、8本中2本が史上最高値の6万2,500香港ドル(=84万3,750円)で落札された。

今年のグランプリ受賞米も獺祭となるが、その行き先はまだ決まっていない。桜井社長は、「素晴らしい米を作っていただいたので、次は私たちの番。最高の酒を作り、その経験を他の獺祭にも繋げていくので期待してほしい」と、質を高めた酒造りへの意欲を語った。

今後は、当地の米で仮に仕込み品質を確かめたのち、2月中には受賞米の本仕込みとなる予定だ。また、プロジェクトについて「日本の米だけでなく、世界中の山田錦で募集したらもっと面白くなるのではないかと期待している」と、世界展開への意欲も語られた。