Samsung Electronicsが、EUVを活用したプロセスの微細化で先行するTSMCに対抗することを目的に、2022年にEUVをフル活用する3nmプロセスでのロジックデバイスの量産を開始する計画を立てているほか、米国テキサス州オースチンにある半導体製造子会社にEUV専用ラインを増設する見込みであると、韓国毎日経済新聞が内部事情に詳しい関係者の話として11月18日付で報じている

同報道からでは、米国政府の要請による検討段階の話なのか最終判断の段階なのかは不明であるが、同社は、システムLSIおよびファウンドリ用ファブとして、韓国器興にS1 Fab 、米国テキサス州オースチンにS2 Fab、韓国華城にS3 Fabおよび初のEUV専用棟として今春稼働を開始したV1 Fabを有しているほか、韓国平澤に新たに建設したEUV専用棟で2021年から5nmプロセスの適用を予定しており、もし、米国工場にEUV専用棟が増設されれば、同社にとって3番目のEUV専用棟という位置づけとなる。

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    Samsung Austin Semiconductor(Samsung Electronics)の外観 (出所:Samsung Webサイト)

米国政府はSamsungにも先端ファブの建設を要請

米国政府は、国家安全保安上の理由で、IntelやGLOBALFOUNDRIES(GF)などの米国企業、およびTSMCやSamsungなどの海外半導体企業に米国本土での先端半導体ファブ建設を要請してきたが、いまのところ、TSMCが5nmプロセスを用いたファブの建設を決めただけである。そのTSMCも、米国政府の補助金なしでの米国進出は困難として米商務省と交渉中であり、補助金の裏付けに向け、米国議会では半導体製造強化法案が審議中である。

Samsungの米国半導体子会社のWebサイトによると、28/32nmプロセスの受託生産が中心で、先端プロセスも14nmまでとなっており、EUVを利用するような最先端プロセスには対応していない。

韓国のメモリビジネスが液晶ビジネス同様にいずれ中国に奪われることを懸念した韓国政府の非メモリビジネス強化方針に従い、Samsungは2030年までに非メモリ分野(ロジックやファウンドリ事業)でTSMCを抜いて世界一となると宣言しており、そのために133兆ウォンを投資することを決めている。しかし、EUVを用いたプロセスの微細化でTSMCに後れを取っており、この目標実現のためには、微細化競争でTSMCに追いつき追い越す必要がある。米国でもTSMCに対抗してEUVによる微細化デバイスの受注競争をする可能性はあるものの、EUV専用棟の建設に関してはまだ正式な発表はなされてはいない。

また、Samsungの2020年1~9月の累計研究開発費は15兆9000億ウォンで、前年同期比で6000億ウォンほど多い。同社の研究開発費は、2017年16兆8000億ウォン、2018年18兆7000億ウォン、2019年20兆2000億ウォンと増加の一途で、2020年は年間でも過去最高を更新する見通しである。さらに開発技術者の増員で総従業員数(2020年9月時点)も過去最高となっており、新型コロナウイルスが蔓延する中でも研究開発の手を緩めず、5G/AI技術開発など急長分野の研究開発に注力していることがうかがえる。