財形貯蓄とは、勤務先を通して貯蓄を行う制度のこと。財形貯蓄を利用すると、自動的にお金を貯めることができます。財形貯蓄のメリットは、普通の預金にはない利息の非課税制度です。
ここでは、財形貯蓄の仕組みや種類についてご紹介します。また、財形貯蓄のメリット・デメリットや気になるポイントについても見ていきましょう。
毎月コツコツ貯める財形貯蓄とは?
財形貯蓄とは、給与天引きで貯められる預金制度です。主な特徴は下記のとおりです。
・勤務先に財形貯蓄制度があれば利用できる
・毎月決まった金額(任意で設定可能)が給与から天引きされる
・目的別に、「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類がある
・貯蓄先は会社が契約している金融機関となる
財形貯蓄を始めたい場合は、まず、勤務先に制度があるかどうかを確認する必要があります。財形制度がある場合は、希望の種類を選択して積み立てを行いましょう。
3種類の財形貯蓄の違い
財形貯蓄は、目的別に3種類あります。それぞれ、どのような目的の貯蓄制度なのか見ていきましょう。
・一般財形貯蓄(一般財形) : 目的を限定しない財形貯蓄
・財形住宅貯蓄(住宅財形) : 住宅購入やリフォームに使用するためのお金を貯めることを目的とした財形貯蓄
・財形年金貯蓄(年金財形) : 老後資金を貯めることを目的とした財形貯蓄
上記のうち、住宅財形と年金財形では、目的に合致した用途で引き出す場合、利息にかかる税金が550万円まで非課税になる優遇制度を利用できます。一般財形にはこの制度はありません。
財形貯蓄のメリット・デメリット
財形貯蓄には、堅実にお金を貯められ、目的によっては非課税等の優遇措置が受けられるというメリットがあります。その反面、利率はそれほど良くありません。財形貯蓄のメリットとデメリットを知り、自分に合っているかどうかを考えて利用することが大切です。
財形貯蓄のメリット
・手間をかけずにお金を貯められ、使いすぎを防げる
財形貯蓄の一番のメリットは、手間をかけずにお金を貯めやすい仕組みを作れる点です。
自分で銀行に行って積み立てる必要はありませんし、給与天引きなので、最初から「ないもの」として、振り込まれた給料から生活費を使うことができるので、使いすぎを防げます。意思が弱く、手元にお金があるとつい使ってしまう方や、思いどおりに貯められない方には、おすすめの貯蓄方法だといえるでしょう。
・住宅財形と年金財形は、利子が非課税になる
住宅財形と年金財形には、合計で550万円まで利子が非課税になるというメリットがあります。 住 宅財形は住宅購入や増改築に使用する場合、年金財形は60歳以降に年金形式で受け取る場合に、利息にかかる所得税や住民税が非課税になります。
・財形住宅融資が受けられる
住宅財形を1年以上利用していて、残高が50万円以上ある人が住宅ローンを組む場合、「財形持家転貸融資 」という融資制度を利用することができます。残高の10倍相当額を限度に、最高4,000万円まで融資が受けられますので、審査に不安がある人にとってもメリットがあるといえるでしょう。
・目的以外の用途でも引き出せる
住宅財形や年金財形は、目的以外の用途で引き出すこともできます。「住宅購入のために貯めていたが、車の購入資金にしたい」ということもできるのです。流動性が高いことも、財形貯蓄のメリットのひとつといえるでしょう。ただし、この場合は、過去5年分の積立額の利息に対して税金が課せられます。
財形貯蓄のデメリット
・利用できる人が限定されている
財形貯蓄のデメリットは、そもそも勤めている会社が財形制度を導入していない場合は利用ができないという点です。財形貯蓄を検討する場合は、まず、勤務先に制度があるかどうかを確認してみましょう。
・利率が低い
財形貯蓄は、利率が低いという点もデメリットのひとつです。一般的な預金金利とほぼ変わらないことから、低金利下においては、貯蓄を増やすことはあまり期待できなくなっています。
・気軽に引き出せない
頻繁に貯蓄を出し入れしたい方には、財形貯蓄は向きません。預け入れは給与からの天引き、引き出しをするにも会社を通して手続きを行うため、つい手を出してしまうことは防げますが、気軽に出し入れはできないでしょう。
財形貯蓄が向いている人の特徴
財形貯蓄には、見方によってメリットにもデメリットにもなる特徴がいくつもあります。総合的に考えて、勤務先に財形給付金制度があり、下記の条件にあてはまる方は、財形貯蓄を利用するメリットがあるといえるでしょう。
・自分では計画的に貯めることができない方
・将来のために長期的にお金を積立貯金したいと考えている方
・使う用の貯金とは別に、貯めるだけの口座を作りたい方
・住宅取得や老後資金のための貯金がしたい方
なお、「財形給付金制度」とは、会社が財形貯蓄を行っている社員に対して、一定の給付を行ってくれる制度のことです。このように、企業が財産づくりを援助してくれる制度がある場合は、たとえ低金利でも財形貯蓄を利用するメリットがあるといえるでしょう。
こんなときどうなる? 財形貯蓄の気になるポイント
財形貯蓄は会社を通して手続きをするため、手続きの方法や転職・退職するときにはどうなるのかなど、気になる点があるかと思います。ここでは、財形貯蓄の気になるポイントをまとめました。
財形貯蓄はどうやって始める?
財形貯蓄は、会社を通して手続きを行います。そのため、まずは財形貯蓄制度が勤務先にあるかどうかを確かめなければいけません。総務部や労務部等、給与や勤怠を担当している部署に確認すれば教えてもらえますし、就業規則や賃金規定等にも説明があるはずです。
次に、3種類ある財形貯蓄のうち、どの種類にするかを選びます。財形貯蓄は複数行うこともできますから、「住宅財形に毎月1万円、一般財形に毎月5,000円」といったことも可能です。 どの財形貯蓄に毎月いくら貯めるかを決めたら、所定の手続きを行います。
なお、財形貯蓄には、一般財形は原則3年、住宅財形と年金財形は原則5年以上積み立てるという要件があります。これは、あくまでも原則で、中途引出や中途解約も可能です。その間、引き出せないということはありません。
転職するとき どうなる?
転職先に財形制度がある場合は、引き続き財形の積み立てを継続できます。取扱金融機関が違う場合でも、預け替えが可能です。
一方、転職先に財形制度がない場合、新たな積み立てはできません。各契約に応じて解約等の手続きを行うことになります。
海外赴任するとき どうなる?
一般財形の場合、給与が国内で支払われるのであれば、海外赴任をしても積み立てを続けることができます。
一方、住宅財形や年金財形をしている方が1年以上海外赴任をする場合は、非課税での積み立てができません。ただし、出国する日までに会社を通して、「海外転勤者の財産形成非課税住宅・年金貯蓄継続適用申告書」を提出することで、最大7年間、非課税措置が継続されます。なお、新たに住宅財形や年金財形をすることはできません。
退職するとき どうなる?
退職した場合、2年以内に財形貯蓄制度のある新しい会社で手続きを行えば、そのまま非課税のメリットを保ったまま貯蓄を移転できます。
なお、転職先に財形貯蓄制度がない場合は、その時点で払い出しをしなければいけません。その際、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄の場合は、目的とは異なる引き出しとなるため、課税扱いとなってしまいます。
途中で別の財形貯蓄にできる?
一般財形に預けていたお金を途中で住宅財形などに移し替えることはできません。最初に選んだ種類で積み立てを続けることになりますから、慎重に選びましょう。
なお、一般財形をやめて新たに住宅財形を始めたり、一般財形を継続したまま追加で住宅財形を始めたりすることは、問題ありません。
入金されるまでどのくらいかかる?
財形の引き出しは、基本的に会社を通して行います。そのため、「今日10万円必要だから、今すぐ引き出す」といったことはできません。実際に入金されるまでには、数日程度かかると見ておきましょう。
財形貯蓄は堅実にお金を貯めたい方におすすめ
財形貯蓄には、確実にお金を貯めていくことができるというメリットがあります。会社を通さないとお金を引き出せないため、つい使ってしまうという方には向いているといえるでしょう。
ただし、利息はあまり高くなく、資産を増やすための運用方法としては弱いかもしれません。財形貯蓄のメリットとデメリットを理解した上で、ほかの資産形成方法等と組み合わせて活用してみてください。