京都大学(京大)は8月25日、BCGワクチンの接種義務制度と新型コロナウイルスの拡散率の関係性を調査した結果、義務化している国の方が義務化していない国と比べて、感染者数、死亡者数ともに増加率が有意に低いことを見出したと発表した。

同成果は同大 こころの未来研究センターの北山忍 特任教授(ミシガン大学教授)らの研究グループ。詳細は米国の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載された。

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    今回の研究のイメージ (出所:京大Webサイト)

新型コロナウイルスによる感染者数や死亡者数の国ごとの違いにBCGワクチンの接種が関係しているのではないか、という話が各所で取り上げられ、世界各地でその関連性についての検証に向けた取り組みが進められてきたが、国際比較データの分析に伴う方法的問題から結論は示されていないのが現状である。

そこで研究グループは今回、感染者数や死亡者数の報告に関わるバイアスが結果に影響している可能性があると考え、国ごとの流行の初期30日間における感染者数と死亡者数の増加率を参照することで報告バイアスの効果を排除。また、個々の国は多くの次元で異なるため、そうした交絡要因をできる限り排除し、統計的に統制したうえで、少なくとも2000年までBCGワクチンを義務付けてきていた国とそうでない国、計130数カ国の比較を試みましたという。

その結果、BCGワクチンの接種を義務付けていた国々では、そうでない国々と比べて、感染者数、死者数ともに増加率が有意に低いことを見出したとするほか、同様の結果は、期間を流行の初期15日間に設定した場合でも確認したという。また、研究グループの試算では、もし米国がBCGワクチンの接種を制度的に数十年前から義務化していれば、2020年3月30日の段階での同国での死者の数は、実際の数(2467人)の約27%となる667人まで抑えられた可能性があるとしている。

研究グループでは、今回の結果を踏まえ、BCGワクチンの接種義務を制度化することで、新型コロナウイルスの流行を抑制できる可能性が示されたとするが、一方で、BCGワクチン接種は従来、幼年期になされるものであり、これが大人にも有効であるか、また、新型コロナウイルスに罹患している場合に逆効果にならないかなどの問題は今後注意深く検討する必要があるともしている。

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    BCG接種義務制度の有無と新型コロナウイルスの流行の始まりから30日間の感染者数と死亡者数の推移 (出所:京大Webサイト)