台湾の市場調査会社TrendForceによると、2020年第2四半期のDRAM市場は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景にサーバメーカーが調達量を増やした結果、DRAMサプライヤのビット出荷数量が従前の予想を上回り、平均販売価格も上昇した結果、前四半期比15.4%増の171億ドルに達したという。

サーバメーカーは第1四半期、第2四半期と連続で積極的に在庫を積み増してきたことから、第3四半期にはかなり高いDRAM在庫を抱えることとなっている。また、こうしたサーバを購入する企業各社は経済見通しが、これまで以上に不透明・不確実になっていることを受け、調達を控えつつあり、TrendForceも2020年第3四半期のDRAM価格が下落し、DRAMサプライヤ各社は利益率の低下に苦しむことになるとの予測を示している。

2020年第2四半期のDRAMシェアに動きなし

2020年第2四半期は、DRAM全体で平均販売価格が10%増となり、さらにビット出荷数量も増加したことから、Samsung Electronics、SK Hynix、 Micron Technologyの大手3社いずれもが売上高を前四半期比で10%以上伸ばしたため、市場シェアについてはほとんど変わらず、3社合計で95%ほどとなるとしている。

また、第3四半期については、Micronが会計年度の目標達成に向け、積極的な価格設定ポリシーの採用を進めると予測されるため、市場シェアをわずかに上昇させる可能性があるとTrendForceでは見ているが、3社の寡占に大きな変化はないとしている。

  • DRAM市場

    2020年第2四半期のDRAMチップメーカー売上高ランキング (出所:TrendForce)

主要3社の営業利益率はこぞって上昇

主要3大サプライヤ各社の第2四半期営業利益率はこぞって上昇した。中でもSamsungは第1四半期の32%から40%の壁を越え、41%まで上昇した。SK Hynixも営業利益率を35%まで向上。主軸をサーバDRAMとしている関係から平均販売価格も上昇し、営業利益の増加につながった。Micronは会計年度が他社と異なるが、3-5月期の営業利益率は前四半期比5ポイント増の21%となった。同社はSamsungとSK Hynixと比べて平均販売価格の上昇が低かったことから、営業利益の押し上げも限定的になった模様だ。

また2020年第3四半期については、主要3社ともにコスト構造の最適化を図ってきたが、平均販売価格の下落を補うまでにはいかないことから、収益性に苦戦することが予想されるとしている。

新型コロナの影響で生産能力増強は不透明

2020年第2四半期、SamsungはLine13の生産能力を従来のDRAMからCMOSイメージセンサへと転換を図りつつ、平澤キャンパスのP2Lでの2020年下期からのDRAM生産に向けた準備を進めてきた。また、それと並行して1Z nmプロセスDRAMの生産割合を高め続けている。

同じく韓国勢のSK Hynixも同四半期、M10ファブのDRAMラインをCMOSイメージセンサに振り分ける一方で、M14ファブでのDRAM生産能力を増強させている。また、同社は2020年下期に中国・無錫におけるDRAM生産能力も増加させる予定としているほか、年間の合計ビット出荷数量の増加を主に1X nmから1Y nmへの移行によって促進させようとしている。

そしてMicronだが2020年通年を通して注力しているのが1Z nmプロセスによる大量生産と、それに伴う生産割合の向上である。すでに同社の1Z nm製品は量産初期段階まで到達。複数の大口顧客がサンプルテストを行っていると言われており、これらのサンプルテストが完全に完了すれば、Micronは1Z nmプロセスをDRAM製造の主軸とする予定である。また、生産能力の増強については、年初から2020年末までほぼ変わらない見通しとしている。

このように主要3社はいずれも2020年については生産能力を増強に対して保守的な立場をとっているが、背景には新型コロナウイルスの世界的なパンデミックによる需要落ち込みがあるためである。TrendForceは2020年8月時点の見通しとして、2021年のDRAM市場の合計ビット出荷数量の増加のうち70%は1Y nmならびに1Z nmへの移行によるものであり、生産能力の向上による寄与は限定的だとしている。