台湾の半導体市場動向調査会社TrendForceは、2020年第1四半期の半導体実装および最終テスト受託業界(Outsourced Semiconductor Assembly and Test:OSAT)の市場規模が、5G、AI、およびスマートフォン(スマホ)向けチップのパッケージングとテストの需要の増加により、大きく成長したと発表した。それによると、同四半期の同業界の売上高ランキングトップ10の合計は前年同期比25.3%増の59億3300万ドルとなったという。

OSAT業界のトップである台Advanced Semiconductor Engineering(ASE)の同四半期業績は、主に5Gスマホ向けAiP(Antenna in Package)や家電製品などに向けたパッケージング需要により、前年同期比21.4%増の13億5500万ドルとなった。

2位の米Amkor Technologyも同様に、5Gと家電製品からの強い需要により、同四半期の売上高は同28.8%増の11億5300万ドル。ASEグループで業界4位の台SPILも同34.4%増の1億800万ドルと高い伸びを示しており、業界3位の中JCETの売上規模に徐々に近づいてきているという。

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    世界最大のOSATである台ASEの社屋イメージ (出所:ASE Technology Holding)

トップ10中、唯一、同四半期の売上高が前年同期比で減少したのは中TSHTで、その背景には中国政府が新型コロナウイルスの発生初期段階で、IRセンサコンポーネントなどの疾病予防製品向けの実装の注文を優先するように指示したので、家電製品向けの実装が後回しになったためだという。

メモリ製品のパッケージングとテストを専門とするOSATの大手である台Powertechは、Kingston、Micron Technology、およびIntelによる注文の伸びにより、同四半期の売上高は前年比33.1%増加した。また、半導体パッケージング後の最終テスト専業である台KYECは、5Gスマホ/基地局、CMOSイメージセンサ、サーバ関連の需要の伸びにより、売上高を同35.9%増と高い伸びを達成した。

トップ10の中でも特筆に値するのは、ディスプレイパネルドライバICとメモリ製品のパッケージング専業である台ChipMOS Technologiesが、順位を2019年の11位から同四半期は9位に上げてきたことである。この好業績の背景には、メモリのほか、大型ディスプレイドライバIC(LDDI)、およびタッチアンドディスプレイドライバIC(TDDI)の需要が増加したことが挙げられるという。

2020年第1四半期は、米中貿易戦争における米国の中国に対する締め付けがやや緩和されたこともあり、OSAT業界もそうした動きを反映した結果、トップ10の多くの企業が季節的に閑散期にあたりながらも成長を達成できたといえる。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により最終セット製品の需要が世界的に減少しており、しかも米中間での緊張が再び高まりを見せていることから、2020年下半期はOSAT業界はその影響を受け、各社ともに業績は下降局面に入ることが懸念されるとTrendForceでは指摘している。