ワイドバンドギャップ技術

シリコンは当初から半導体素子のベース材料として使用されてきましたが、性能を大きく向上させるために、すでに説明したワイドバンドギャップ材料(SiCおよびGaN)が広く使用されるようになっています。

ワイドバンドギャップ材料は同等のシリコンベースのデバイスよりもスイッチングが高速である上、低損失で動作し、より高温での動作が可能になっています。SiCとGaNは元々MOSFETを対象にしており、効率とスイッチング速度が要求されるアプリケーションに大きな利点をもたらします。

電源管理IC

電源用途では、AC-DC、DC-DC、DC-ACなどのさまざまな電力変換方法に応じて、多様なICが使用されています。そのため、特定の適用基準に適合する多数のトポロジがあります。一般的なトポロジとしては、バック、ブースト、ブリッジ、ハーフブリッジなどが挙げられます。電源システム設計でコントローラとして機能するICを製造するメーカーもあります。このICを使用すれば、外付けMOSFETと少数のディスクリート部品のみで完全な設計プロジェクトを構成できるため、開発期間の短縮が可能です。

設計によってはリニア変換が要求されることがありますが、多くは医療機器や科学装置など、超低ノイズが不可欠な専門的用途の場合です。リニアコントローラには明らかな理由から外付けMOSFETを必要とするものもあれば、MOSFETが内蔵されていて一般的に「3端子レギュレータ」と呼ばれるものもあります。リニア変換は、特に入力電圧と出力電圧の差が大きい場合、効率が低くなる傾向があります。

一般的にスイッチモード電力変換がより普及しており、広範なICを利用できます。低電力用途向けに設計されたデバイスでは、コントローラにMOSFETが内蔵されている場合がありますが、高電力の場合、MOSFETとコントローラは通常別々になっています。デバイスが複雑になると、マルチフェーズの電源ソリューション設計が可能になります。また、大型でさらに複雑なシステムに組み込まれる、その他の電源関連機能向けのさまざまなICがあります。

制御ICは多くの場合互換性があるように見えますが、この分野には多数の専有技術があります。メーカーがライセンス契約などを通じて技術を共有する場合もありますが、製品間で微妙な違いがあることが多いため、導入後に問題が発生する可能性があります。

電源部品のパッケージオプション

電力変換は、ヒートシンクに実装する必要があるため、スルーホールタイプの部品が存続する数少ない分野のひとつです。しかしほとんどの部品には表面実装のオプションがあります。図6に一般的なタイプを示します。パッケージ技術は急速に進化しており、多くのメーカーがダイから熱を逃がす革新的な方法を探し出しています。それにより、長期にわたる動作の信頼性を維持しながら、性能ベンチマークを引き上げ、電力密度レベルを上げることが可能になっています。

  • パワー半導体

    一般的なパワー半導体のパッケージの種類

まとめ

電源設計は複雑な分野であり、設計者は、従来にない性能を実現しながら、効率と安全性の基準にも適合するという課題に取り組んでいます。電源システムで使用するデバイスはさまざまなものが発売されていますが、それらは大まかに、ダイオード、トランジスタとMOSFETを含む電源スイッチ、そして電源回路で要求される機能を提供する複雑な集積回路という3つのカテゴリに分けられます。

また、電源回路の性能をさらに高めるためのデバイスが次々に現れています。重要な指標である効率と信頼性の観点から、高性能を実現する堅牢なワイドバンドギャップ材料が、高価格にも関わらず選択されるようになっています。