2020年の半導体製造装置市場はマイナス成長に

半導体および製造装置市場調査会社である米VLSIresearchは、当初プラス成長と予測していた半導体製造装置市場について、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて急激に悪化し、マイナス成長となることは確実な状況になったと3月23日(米国時間)に発表した。

しかしながら、いつ感染拡大が終息に向かうのか誰にも予想できないため、今後の半導体製造装置市場の動向を正確に予測するのは困難であるとして、考えられる3つのシナリオを用意するにとどめている。

  1. 新型コロナウイルスの影響がそれほどでもない場合:2020年第3四半期から経済が徐々に回復し、2020年の半導体製造装置市場は前年比5%減となる。これが、現在もっとも出現可能性が高いと予測されるという。
  2. 新型コロナウイルスの影響が中程度の場合:経済活動の回復が遅れ、2020年第4四半期から経済が回復する。その結果、2020年の半導体製造装置市場は同19%減と、よりはるかに大きくなる。
  3. 新型コロナウイルスの影響が大きな場合:経済回復は2021年にずれ込むため、2020年の半導体製造装置市場は同24%減となる。

いずれのケースも、2020年上半期中は経済回復は望めないという点で共通しているため、2020年第1四半期の半導体製造装置市場は前年同期比7%減、第2四半期も同15%減と予測している。

2021年については、2020年のマイナス成長が大きいほど、その反動で大きくプラス成長するとして、シナリオに沿って前年比17&~46%増という急峻な回復を予測。需要回復の原動力として引き続き、5G、データセンター、AI、5nmプロセスといったものが中心となるとする。

  • VLSIresearch

    2020年各四半期、2020年通年、および2021年通年の半導体製造装置市場およびIC市場規模予測。新型コロナウイルス感染の経済回復に及ぼす影響の期間に応じて3つのシナリオを用意している。(出所:VLSIreserch、2020年3月)

IC市場もマイナス成長に

VLSIresearchでは、IC市場についても同様に3つのシナリオを準備し、2020年通年の成長率について4%~20%のマイナス成長、2021年は逆に24~48%のプラス成長との予測を示している。

2019年末時点の予測では、世界半導体市場統計(WSTS)や市場調査会社各社から前年比6—7%程度のプラス成長の予測が出されていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済の混乱の結果、すべての予測が成り立たなくなり、各調査会社のみならず当該企業そのものも長期的な予測を立てられない状況に陥っている。

感染拡大の影響を強く受ける欧米半導体装置メーカー

すで米国カリフォルニア州内の半導体製造装置・材料メーカー各社は当局の操業休止命令を受け、従業員が自宅待機となっているため、工場を稼働できない状態にある。州外に工場を持つApplied Materials(AMAT)やデバイスメーカーのIntelなどは州外に量産工場を有しているものの、本社の従業員は在宅勤務を強いられているほか、州外の工場も世界規模のサプライチェーンの寸断により、予定通りの生産が難しくなりつつある模様である。

露光装置最大手の蘭ASMLも3月中旬より、社員を在宅勤務に切り替えているが、製造装置の生産に携わる2700名の従業員を在宅勤務にするわけにもいかず、感染防止を目的に出社時の体温測定や1.5m以上離した個人ロッカーでの無塵衣への着替え、他人と密着しないクリーンルームでの作業など、さまざまな安全対策を施しながら作業を継続させることで、操業停止には陥っていないと地元紙が報じている。ただし、欧州は現在、新型コロナウイルスの蔓延により、ロジスティクスが正常に機能しない状態に陥っており、出荷に支障がでているとされるが、同社は現状ではその点についてノーコメントとしている。また、オランダにはASMLの近郊にNXP Semiconductorsの拠点もあるが、こちらの半導体製造用クリーンルームも稼働を継続しているという。

半導体メーカーの設備投資は継続できるか?

Samsung Electronicsは、リモートワークなどの拡大によりサーバ需要が増加。その結果、プレミアムDRAMの需要が増加するとの予想から、2020年後半に韓国 平澤事業所に同事業所2番目となるDRAM製造ラインを稼働させる計画を3月25日付で発表しているほか、中国西安のNAND生産拠点の新設第2工場における段階的な増産も計画している。

また、TSMCは5nmプロセスの量産に向けて2020年も大規模投資を予定しているが、半導体業界関係者からは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や、それに伴う半導体製造装置メーカーの操業停止などを見るにつれ、半導体メーカー各社の投資計画や増産計画にも支障をきたす可能性がでてきたのではないかという危惧が出始めているようだ。