浜松ホトニクスが有機系光センサーデバイスの開発を進めている。従来の無機系デバイスでは不可能な印刷法や、曲面形状に対応できる極薄センサーの用途拡大を見込む。また、独自の有機結晶を用いた電界センサーは、帯域の広さを活かして一度に複数の情報取得を可能にするものだ。こちらもモビリティや電磁波障害(EMC)検査市場などを狙い、早期の事業化をめざす。

  • 浜松ホトニクスが開発した、独自の有機結晶「DAST」

    浜松ホトニクスが開発した、独自の有機結晶「DAST」

浜松ホトニクスでは、従来のシリコンフォトダイオード並の使い方ができる有機系受光素子の開発を進めている。フィルム基板上に0.3マイクロメートルほどの薄膜として素子を形成すれば、曲がる受光素子として分光器などに貼り付けて使える。また、有機半導体材料を溶媒に溶かしてインク状にすることで印刷法への適用が可能になり、大面積化が容易になる。ペロブスカイト太陽電池に似たイメージだ。

  • 分光器内部の曲面(指先)に貼り付けたフレキシブル受光素子

    分光器内部の曲面(指先)に貼り付けたフレキシブル受光素子

また、検出器とするために素子構造も工夫している。シリコンに比べて低下する感度を、漏れ電流(暗電流)の低減で補っており、逆バイアス電圧10mVを印加したときの暗電流密度は1平方センチメートルあたり1ナノアンペアである。生体センシングデバイスや食品検査などへの用途を想定している。

このほか、自社生産している世界でも希な有機結晶「DAST」を活用した電界センサーの開発も進めている。DASTを検出部として偏波保持ファイバー(PMファイバー)の先端に取り付けた電気光学(EO)プローブは、高周波帯域から静電界まで、広範囲の電界強度を光情報として同時に読み取れる。

  • DASTを組み込んだ電界センサー

    DASTを組み込んだ電界センサー

これを使って対象物の放射電界を測れば、内容物が水か油か、可能性のある色などの複数情報を一度に把握できるようになる。これまではシリコンフォトダイオードとインジウム・ガリウム・ヒ素の2種類のデバイスが必要だったという。

有機結晶は電波が入ると屈折率が変化するため電界の有無や周波数をつかめる。あらかじめ円偏光の光を入れておくと、電界があれば、円ではなく楕円で戻ってくる。この特性を活かせば検査対象デバイスが断線して電界が発生していることや、車載ミリ波レーダーが動作していないといった異常が把握できる。有機結晶は金属成分を含まないため、磁気ノイズがデータに載らないのも特徴だ。