本田五段の得意戦法、相掛かりを迎え撃ち、苦戦に陥るも逆転勝ちを収める

木村一基王位への挑戦権を争う、第61期王位戦挑戦者決定リーグ紅組(主催:新聞三社連合)の、▲本田奎五段-△豊島将之竜王・名人戦が2月20日に関西将棋会館で行われました。結果は102手で豊島竜王・名人が逆転勝ちを収め、昨年奪われた王位のタイトル奪還に向けて好スタートを切りました。

棋王戦で五番勝負を戦っている最中の新鋭、本田五段と、棋界2大タイトルを保持する豊島竜王・名人との対決となった本局は、先手の本田五段が得意戦法の相掛かりを採用。先手相掛かりの勝率は8割5分を超え、先日の棋王戦五番勝負第2局では渡辺明三冠をも破っています。もちろん、王者の豊島竜王・名人は真っ向から迎え撃ちました。

本局は途中まで棋王戦第2局と同一の進行をたどりましたが、豊島竜王・名人が変化。それに対し本田五段はなんとノータイムで対応します。序盤の研究が行き届いていることをうかがわせました。

先にリードを奪ったのは本田五段でした。飛車・角・桂で巧みに攻めをつなげ、竜を作ることに成功します。竜に追われて玉を逃がした豊島竜王・名人に対し、本田五段は自信のありそうな手つきで桂を打ちました。玉の上部脱出を阻止し、次に桂の利きに金を打つ手を狙った厳しそうな一手で、豊島玉は寄り形に見えます。

しかし、豊島玉が絶体絶命に思えたのは一瞬でした。豊島竜王・名人がノータイムで放った角が絶妙手。守っては自陣の金にひもを付け、攻めては間接的に本田玉ににらみを利かせる攻防の一手です。

角打ちを受けて本田五段は30分考えて守りを固めました。角の利きが強力すぎて一気に攻め潰すことはできなかったようです。角を取らせる間に豊島竜王・名人は先ほど設置された桂を除去して、自玉の安全を確保。形勢を互角に戻し、流れを変えることに成功しました。

局面を点で見ることができれば、確かに形勢は互角なのでしょう。しかし、勝負には過程があります。優勢に近い形勢から、絶妙手で流れを変えられてしまった本田五段は、その後最善手を指すことができませんでした。一方の豊島竜王・名人は角打ちの後は正確無比な指し回し。本田五段のミスをとがめて攻守を逆転させ、一気に本田五段を寄せ切ってしまいました。

前期の王位戦七番勝負で木村一基九段に王位のタイトルを奪われてしまった豊島竜王・名人は、リベンジに向けて幸先のいいスタートを切ることができました。

前王位の豊島竜王・名人
前王位の豊島竜王・名人