Tseng氏は、日韓の貿易紛争のほか、それよりも長引いている米中貿易戦争についても言及した。

半導体の製造装置・素材の自給自足も目指す中国

米中貿易戦争が長引いていることを背景に、米国政府によるHuaweiへの輸出規制も続いており、同社は米国企業以外の部材調達先を探す動きを加速させている。Huawei以外の中国企業も同様にサプライチェーンの拡大に努めている。このため、短期的とはいえ、韓国、日本、台湾企業は事業拡大のチャンスを得ることとなっている。そうした動きの中において、日本勢は特にRF製品、韓国勢は半導体メモリ、台湾勢はファウンドリ・OSATビジネスでチャンスをつかんでいるとSEMIは分析しており、こうした動きが続けば、2020年以降、中国勢の米国離れは加速することになるだろうとしている。

しかし、長期的には、中国政府は中国内に半導体設計から製造、実装・検査に至る自給自足のエコシステムを構築する目標を立てて、その実現に向けてまい進している。すでに中国では中国の国家IC産業投資基金(National IC Industry Investment Fund、通称:国家基金National Big Fund。第2期分、2000億元規模)が始動しており、設計、製造、実装だけではなく、製造装置や素材開発にも補助金を出しており、先端プロセス向けにエッチング装置や素材を提供できる企業も登場してきたという。また、中国のファブレス企業は、急速に先進製品や先端技術への移行を進めており、CPU、GPU、ASIC、RF製品で特にその傾向が強いという。

米中貿易戦争下でも5Gで成長する中国勢

Tseng氏は、5Gが中国にもたらす影響について以下のような見解を示している。

  • 5Gは、米中貿易戦争およびハイテク覇権争いの対象となっている。
  • 中国は、計画よりも2か月はやく、2019年11月1日に5Gサービスを始めた。
  • 中国は、2019年末までに国内50都市で5Gサービスを始めて、世界最大の5G市場になろうとしている。
  • 中国での5G商用化は、Huaweiのビジネスをさらに発展させる。
  • 台湾TSMCは、中国での5Gスマートフォンの普及率を2020年に15%とみており、これは2億個に相当する。中国は、世界中で発売される5G端末の5割以上のシェア確保を狙っている。
  • 短期的には、5Gサービス開始で、アプリケーションプロセッサ、モデム、RF、PA(パワーアンプ)、PMIC(電源管理IC)などの半導体製品の需要を喚起するだけではなく、半導体メモリの過剰在庫 の平準化にも貢献するだろう。
  • 中期的には、5GはIoTの発展を促すだろう。

またTseng氏は、「5Gが今後の半導体産業やIoTの発展を促す。そのため中国は、米中貿易戦争下でも5Gを国家発展の起爆剤として利用し先導しようとしている」と述べており、5Gの主導権争いが今後、さらに激しくなってくる可能性を指摘している。