市場動向調査会社である台TrendForceは、2020年のICT分野における10大トレンドについての予測結果を発表。AI、5G、自動車などの産業が半導体需要を牽引する役割を担うとの見解を披露した。

  • 2020年のICT分野10大トレンド

    TrendForceによる2020年のICT分野における10大トレンド予測

1:半導体需要を後押しするAI、5G、自動車

2019年の半導体市場は、米中貿易紛争の影響などもあり低迷が続いている。紛争の解決に向けた道筋なども立っていないことなどから、2020年についても需要見通しが不透明な状態が続いているが、TrendForceは、5G、AI、および自動車分野における高い需要を背景に、市場が徐々に回復することが期待されるとしている。2020年、ファブレス企業の戦略は、主に次世代IPコアの導入と、半導体チップのカスタマイズとASICの開発に関連する機能の強化が中心になると見られるほか、7nm EUVリソグラフィや5nmなどの次世代プロセステクノロジーの採用を加速すると見られている。

一方のファウンドリ側は、7nmプロセスに対応するウェハの投入が増加し続けるほか、5nmの量産、そして3nmのR&Dスケジュールが明確化されることが見込まれる。さらに、さまざまな機器のエレクトロニクス化の進展に伴い、SiC、GaN、GaAsといった化合物半導体材料の開発と使用にもますます注目が集まるともしている。

半導体実装に関しては、より小さなプロセスピッチとより高い計算能力を特徴とする半導体製品への需要が継続するため、ICパッケージング技術はSiPへとシフトが進む。SiPアーキテクチャは、SoCアーキテクチャに比べて柔軟性が高く、低コストであるため、AI、5G、および自動車アプリケーションの要件を満たしていると同社では分析している。

2:半導体メモリのトレンドはEUV活用

DRAMは、プロセス技術の開発がより微細な10nmクラス(1X nm、1Y nm、および1Z nm)に移行するにつれて、チップサイズを縮小しても、供給ビットが増加しないだけでなく、コスト削減もますます難しくなっている。

DRAMサプライヤは現在、1Y nmおよび1Z nmプロセステクノロジーを使用して、チップあたりの記憶密度を従来の8Gビットから16Gビットに増加させることを目指しているが、これにより高密度モジュールの市場浸透率が高まっていくことが期待される。特に1Z nmプロセス世代では、EUVリソグラフィ装置の活用により、液浸ArFによる複数回露光を1回露光に置き換える可能性があり、DDR5/LPDDR5の登場とあわせ、世代交代が進む可能性が高いという。

一方のNANDは、2020年にいよいよ100層超の製品の登場が期待されるようになり、チップあたりの記憶容量も引き上げられることが期待される。こうした傾向は、主に5G、AI、およびエッジコンピューティングの分野におけるデータ活用ニーズに対応するためで、より大きなストレージ容量をより小型化したフォームファクタで実現することが求められている。例えばスマートフォンでは、UFS 2.1からより高速通信が可能なUFS 3.xにインタフェースが更新される可能性が高い。また、サーバ/データセンター向けストレージであるエンタープライズSSDでは、2020年にPCIe Gen4対応品が登場する見込みであるという。

3:5Gの商用アプリの範囲が拡大

2020年の電気通信産業は、5Gを中心にして発展することが期待される。主要な通信チップメーカー(Qualcomm、中HiSilicon、Samsung、MediaTekなど)および通信機器プロバイダー(Huawei、Ericsson、Nokiaなど)は、5G市場で競合するさまざまなソリューションを提供するようになると見られるほか、ネットワークアーキテクチャ開発では、スタンドアロン(SA)5Gに重点が置かれるため、5G New Radio(NR)機器およびコアネットワークソリューションの需要の増加が予想される。

また、2020年前半にR16標準の開発が予定どおり完了した後、世界各国の通信会社は5Gインフラの本格的な展開を開始することとなる。人口の多い大都市圏での5G網の展開から準じ、対応範囲が拡大していくことから、2020年には多くの5G機器と無線基地局が市場に登場することが予想される。

4:スマートフォン - 5Gでの中国勢シェアは50%に

2020年のスマートフォン(スマホ)のデザインの焦点は、表示領域を最大限に活用して、可能な限り完全なフルスクリーンを実現することである。また、フルスクリーンデザインの最適化は、ディスプレイ内指紋センサの採用の拡大、スクリーンが側面に曲がる角度の増大、およびディスプレイ内カメラの開発のさらなる進歩につながる。

このほか、スマホメーカーでは、オンボードメモリとフロントカメラ、リアカメラの改良も進めている。メモリは、DRAMおよびNANDの記憶容量の増加が続くほか、カメラについては解像度を高めるほか、より洗練されたマルチカメラ機能の導入が期待されるという。

また5Gに関しては、スマホメーカー各社が積極的に対応モデルを展開していくであろうが、中国政府が積極的に5G網ならびに付帯する関連サービスの商用化を積極的に推進していることもあり、2020年における5Gスマホのシェアは全体の15%以上となり、中国メーカーによる端末がそのうちの半数以上を占めるものとTrendForceでは予測している。ただし、ユーザーが5Gスマホそのものを購入するかどうかについては、5G網の普及具合や提供されるデータプラン、スマホ本体の価格などの要件次第となるともしている。

5:FPD - タブレットがMini LEDとOLEDの戦場に

スマホのパネルは、これまで有機EL(OLED)と液晶ディスプレイ(LCD)が活用されてきた。5Gでもその傾向は変わらないが、よりリアルタイムに広帯域な伝送が可能になるため、90Hz/120Hzのパネル需要が高まると見られる。

また、eスポーツ関連では、既存の高リフレッシュレートパネルに加えて、Mini LEDをバックライトに採用することでコントラストを高めるハイエンド製品が登場してきたほか、2020年のiPadにMini LEDバックライトとOLEDが導入されるといううわさもあり、タブレット市場での新規技術の導入が市場拡大の好機となる可能性が出てきた。