ヴーヴ・クリコの名を世界に広めた女性起業家、マダム・クリコの精神を体現する人を表彰する「ヴーヴ・クリコ ビジネスウーマン アワード」。2019年、ここに大石佳能子さん、平野未来さんの名前が新たに刻まれた。革新的な事業を展開するこの2人の女性起業家に、受賞の感想や女性起業家の障壁、そして起業を目指す女性へのアドバイスを伺った。

  • 9月12日に行われた「ヴーヴ・クリコ ビジネスウーマン アワード 2019」表彰式

2人の革新的女性起業家にインタビュー

─このたびはビジネスウーマン アワード、ニュージェネレーション アワードの受賞、おめでとうございます。受賞の連絡を受けたときの率直なご感想をお聞かせください

大石:正直言って、「あれ、私が(ビジネスウーマン アワードを)もらえるんだ!」とびっくりしました。実は私はお酒が好きで、自己紹介にも『趣味:料理、酒』と書いているくらいなので、たくさん飲んでいるのがバレたかなと思いました(笑)。さすがにヴーヴ・クリコはめったに飲めないですけれど(笑)。

平野:マダム・クリコさんは、ヴーヴ・クリコを世界中で愛される事業にまで成長させた方ですので、このような賞をいただけるのは本当に光栄です。一方で、私が成し遂げたいことと比較すると、いまできていることは0.000…1%ですので、ちょっと早いかなという気持ちもあります。ですが私が頂いたのはニュージェネレーション アワードですから、激励の意味もあるのかなと考えて頑張っていきたいと思います。

やりたいことを伝えていけば応援してくれる人は現れる

─日本ではいまだ男性中心の社会が続いています。社会における女性の障壁や、女性の活躍を阻害していると感じていることはありますか?

大石:統計的にどうかは別として、私はそんなに阻害されているという感覚はないんですよ。ただ起業という第一歩を踏み出せない女性がいることは確かで、それは企業のなかでマネジメントポジションに上がりたくないと考える女性がいるのと同じような感じだと思います。

そのような女性は起業に対して『怖い』だとか、『社会が受け入れてくれないんじゃないか』とか、そういう感覚があるのではないかと思うのですけれども、実際起業してみると、案外応援してくれる人が大勢います。

やはり仕事の世界はまだ男性社会ですから、頑張ってるし、珍しいし、助けてあげなくちゃみたいな、ある意味珍獣をかわいがるようなところはあるのかもしれないですけど、結果として結構サポーターはいるなと感じますね。第一歩を踏み出してみて、自分がやりたいことをちゃんと伝えていけば、ちゃんと応援してくれる人は現れると思いますよ。

  • ビジネスウーマン アワードに輝いた、株式会社メディヴァ 代表取締役 大石佳能子さん

─大石さんは女性起業家だからといって障壁を感じることはなかったのですね。平野さんはいかがですか?

平野:女性に対して「起業するな」という空気は特にないと思うのですけれども、小さい頃から「女の子はこうだ」とある程度決めつけられているような感じはあるのかなと思っています。例えば中学生、高校生のときも、「男の子の方が勉強のスピードが早いから、(女の子は)あらかじめ準備しておかないとダメだよ」というような教育を受けていているので、それを真剣に捉えてしまう子もいるのかもしれません。

あと女性で社長というと「モテなさそうだな……」とか、そういう雰囲気あるじゃないですか(笑)。もしかしたらそういうのを嫌がる女性もいるのかもしれないですけれども、一端起業してみると「女性だからどうこう」というのは全然なくて。恐らく大企業とかよりも、起業家の方が男女差別って圧倒的に少ないんだろうなと思いますね。大企業で鬱屈とされているような方は、バンバン起業されたらいいんじゃないかなと思います。

一歩踏み出すと物事を一気に進めていける

─大石さん、平野さんはロールモデルとして女性起業家の道しるべになると思います。起業を志している女性に対してのアドバイスをお願いします

大石:踏み出した後に見える景色は、踏み出す前に悩んでいた景色とだいぶ違います。とりあえずまずは、その新しい景色を見てみたいと思ってやってみることです。あとあんまり深く考えないこと。日本人ってすごく真面目なんですよね。「始めた以上はきっちりとやらなくちゃいけない」と思っている人が多いのです。

でも現実問題、やろうと思ったことってそううまくいくわけでもないですし、失敗することも結構あるんです。でも、あきらめなければ必ずどこかで成功するじゃないですか。だから「どうせうまくいかないんだから、またちょっと角度変えて頑張ってみよう」というぐらいの軽い気持ちでやってみたらいいんじゃないかなと思います

平野:大石さんのアドバイスと似ていますが、とにかく最初の一歩を踏み出してみる、これが圧倒的に大事ですね。起業して実際にやってみるとわかってくることがあるんです。起業する前に「う~ん、どうしよう」と悩んでいる時間は本当に無駄でしかなくて、一歩踏み出すと物事を一気に進めていけるんです。

もちろん失敗もあるのですけど、それを“失敗”と捉えるのか、“新しい知識”として捉えるのかはマインドの持ちようかなと。“失敗”と捉えると「自分は挑戦したけどダメだった」と感じて終わってしまいますが、なにかをやってダメだったとしても「これがダメならばこうしよう」と自分自身の事業をブラッシュアップできるわけですよね。なので“失敗”と捉えず、あきらめずにより良い方向に進めること。その一番最初が「第一歩を踏む」ということだと思います。

  • ニュージェネレーション アワードを受賞した、株式会社シナモン 代表取締役CEO 平野未来さん

物事を実現させる力を持つこと

─最後に、マイナビニュースを読んでいる20~30代の社会人のみなさんにメッセージをお願いできますでしょうか

大石:これからすごく社会は変わっていきます。就職しても会社も役所も守ってくれないので、最終的には「自分がどれだけの価値を持つか」しかないと思うんですよ。価値を持つとは何かというと、ビジョンもそうだし、リーダーシップもそうですが、つまりは物事を実現させる力をどれだけ持っているかです。

そういう力を持っていればどこででも生きていける人になれるので、まだ20~30代ならどうやったらそういう人になれるかを真剣に考えて欲しいですね。組織の中で偉くなるとかじゃなくて、もっと外の広い世界を見ながらその実現に向けて頑張って欲しいなと思います。

平野:「自分が息を吸うレベルで得意なこと」を見つけてほしいと思います。ほとんどの方の「自分はこれが得意だ」と思っていることは、息を吸うレベルで得意なことではないのです。なぜかというと、人間はどうしても「ちょっと頑張って成功した」という経験から報酬体験が働いてしまうので、「自分はこれが得意なんだ」と思ってしまいがちなんですよね。

でも本当に得意なこととは、自分が努力をしなくてもアウトプットが出せるような、そういったものです。みなさん、この「自分が息を吸うレベルで得意なこと」に結構気付いていないんです。「他の人は努力をしないとできない」というのは気付きにくいんです、その人にとってはできて当たり前のことですからね。もしそれに気付ければとても強みになると思います。