8月3日、第1期ヒューリック杯清麗戦五番勝負第1局の里見香奈女流五冠―甲斐智美女流五段戦が東京都港区「グランドニッコー東京 台場」で行われ、里見女流五冠が勝利を収めました。

意欲的作戦で甲斐女流五段の居飛車を破る

史上初の女流六冠を目指す里見女流五冠

本棋戦は今年新設された新女流棋戦。全女流棋士(今期は62人)が6勝通過、2敗失格の予選で4枠の本戦出場枠を争い、通過者により本戦が行われました。今期第1期は本戦決勝に残った両者による五番勝負で初代「清麗」が決まります。里見女流五冠と甲斐女流五段は、ともに6勝1敗で予選を通過し、本戦でそれぞれ頼本奈菜女流初段、中村真梨花女流三段を下して五番勝負進出を決めました。

両者とも基本的には、飛を角のほうへ移動させ、飛がいたほうへ玉の城を築く「振り飛車」が得意な振り飛車党ですが、相手が振り飛車の場合には飛をもとの位置のまま戦う「居飛車」を選択する場合もあり戦型に注目が集まりました。本局は先手の甲斐女流五段が初手に飛の先の歩を突いて早々に居飛車の作戦を明示。里見女流五冠は飛を振り、玉の守りにつけることが多い金を前線に送り攻めに使う意欲的な作戦を見せました。

角が交換され、里見女流五段が歩を1枚得する代わりに甲斐女流五段が敵陣に向け歩を伸ばしてプレッシャーを掛けて中盤は互角の分かれでしたが、先攻を目指した甲斐女流五段の指し手に乗り、盤上に取り残されるとまずい攻めの金を難なく相手の銀と交換した里見女流五冠がペースをつかみ始めます。

互いに飛を成り込んで敵陣攻略を目指す終盤戦。里見女流五冠の陣形は振り飛車の常とう形である、側面からの攻撃に強い「美濃囲い」の陣。その堅さを頼りに最短の勝ちを目指します。甲斐女流五段は側面ではなく敵玉正面への「縦の攻め」で必死に挽回を図りましたが、龍(※成った飛)と飛で迫った里見女流の厳しい寄せがひと足先に決まりました。

里見女流五冠が史上初の女流六冠に向け幸先の良いスタートを切りました。第2局は24日、鹿児島県指宿市「指宿 白水館」で行われます。