国内で乱立するQRコード決済の仕様を統一した統一QR「JPQR」の普及促進を目的とした「キックオフイベント」が6月22日、和歌山県白浜市で開催された。
同イベントに出席した石田真敏総務大臣は、「政府は現在2割のキャッシュレス化比率を2025年までに4割に引き上げる目標を立てて、一体となって進めている」と強調。政府としても統一QRによってキャッシュレスの利用拡大を推進していきたいと述べた。
JPQRは、国内外の関連団体や関係省庁などと相互連携を図り、キャッシュレスを推進する一般社団法人であるキャッシュレス推進協議会が策定したQRコードの仕様。
各コード決済事業者がこれに対応することで、利用者は事業者の違いを気にせずにコード決済を利用できるようになると期待されている。
このQRコードの普及を目指して、まずは岩手、長野県、和歌山県、福岡県の4県で先行してJPQRサービスを実施するという。
今回の事業のメインとなるのは、店頭に店舗のQRコードを掲示し、それを利用客が読み取る「店舗掲示型=MPM(Merchant-Presented Mode)」と呼ばれる方式。このMPMは、店頭にQRコードを置くだけでコード決済に対応できるという安価で手軽な方式として、特に小規模・個人店舗に適した方式だ。
今までは、複数事業者のQRコードをそれぞれ並べる必要があり、見た目的にもスペース的にも、複数事業者の同時利用が難しかった。また、複数事業者に対応しようとすると、それぞれ個別に申請して審査を待つ必要があり、その手間も膨大だった。
こうしたことから、JPQRでは対応事業者であれば1つのQRコードを掲示するだけで、各事業者の決済に対応できるようにした。利用客側は、支払時にQRコード決済であることを指定し、自分が使う決済事業者のアプリで店頭のQRコードを読み取り、指定された金額の支払いを行うだけでいい。
さらに、今回は全国の地方自治体や地元の商工会などと連携し、中小店舗向けに説明会を複数回開催して利用店舗拡大を図るほか、各事業者への申請も1つの申請書で同時に申し込めるようにする。商工会が契約を取りまとめ、地元金融機関経由で各事業者が審査を行って一括で契約できる。
例えば和歌山県では地銀の紀陽銀行が対応。地元商工会などが県内35カ所で説明会を実施して参加店を募っていく計画だ。申請では、最大8事業者まで同時に行えるので、一気に対応事業者を拡大できる。
これによって、これまでのように複数のQRコードから自分が使いたい決済事業者のものを探し、アプリを起動し、読み取る、といった必要がなくなる。「自分の普段利用している決済サービスがない」といって諦めることもなくなる。店舗側も、手間を最小限にして複数事業者と契約でき、キャッシュレス化を容易に進められる。
参加するのはNTTドコモ、Origami、KDDI、福岡銀行、みずほ銀行、メルペイ、ゆうちょ銀行、LINE Payの8事業者。PayPayも参加しているが、利用客が自分のスマートフォンでコードを提示する「CPM(Customer-Presented Mode)」のみでの参加となる。
8月1日からは、Origami Pay、J-Coin Pay、メルペイがMPMでのJPQR対応を開始。10月1日からはau PAY、ゆうちょPay、YOKA! Payがスタートする。LINE Payとd払いはそれぞれ開始時期を調整中だという。
各事業者はさらに、8月1日からCPMでもJPQRに対応することを想定。この場合、利用客側のスマートフォンで表示するコードがJPQR仕様に基づくものになり、店舗はJPQR対応のPOSでコードを読み取れば、どの決済サービスでも自動で選別してくれるようになる。
CPMに対応するのは4県のセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンで、和歌山県下ではスーパーマーケットのオークワや松源が対応する。PayPayもこの方式で参加する。
MPM方式の場合、JPQR側が発行した店舗ごとのQRコードが店頭に張り出され、その下に対応する決済事業者が表示される。利用客は支払時にコード決済であることを告げて、自分の使っている決済サービスを選んでアプリでJPQRを読み取り、金額を入力して支払いを行う。
総務省情報流通行政局情報通信政策課の調査官の飯倉主税氏は、「都市部を除くと地域のキャッシュレス化が進んでいない」と指摘。7~8割の小売店・飲食店がキャッシュレスに非対応とされており、決済手数料の安価なコード決済に期待が寄せられるていると話す。
このJPQR普及事業では、特に小規模店舗に参加してもらいたい考えで、申請作業の手間などを削減して地元の商工会、金融機関などの協力も取り付けながら、「人口100万規模の県では2000~3000店舗、4県合計で2~3万店舗の参加を期待する」とアピールする。
石田総務大臣は、初めて体験したコード決済について、「慣れれば簡単に使える」とアピール。25年に4割のキャッシュレス化という目標に対して、「(JPQRが)広まればどんどん使われるようになる」と、前倒しで達成できることを期待していた。