社会人の皆さんの多くは、歳を重ねるごとに「ストレス」が増してくる人も多いのではないでしょうか? そんな社会の中では、ストレス解消法の情報で溢れていますが、「泣く」という選択肢を選ぶ人もいます。
しかし、泣くことがストレス解消に良いとは知ってはいても、大人になるにつれて、特に男性にとっては泣くことがなかなか難しいのではないでしょうか? そこで今回は“感動して泣くこと”を広める「涙活」を行っている感涙療法士の吉田英史氏に、泣くことのメリットについて解説してもらったのでお伝えします。
「涙活」とは?
まず私の普段の活動(感涙療法士の仕事)を紹介したいと思います。感涙療法士とは、涙活イベントを実施して、参加者の心の健康をサポートすることを業としています。泣ける空間を作るべく、いろんな手段を使って、参加者に涙を流してもらい、ストレス解消してもらいます。泣かす手段は、映像、朗読、絵本の読み聞かせ、音楽等、バラエティに富みます。
涙活とは、2~3分だけでも“意識的”に泣くことによって、ストレスを解消する活動です。泣くことが医学的に、ストレス解消になることがわかってきたのです。
その仕組みを話すと、涙を流すと、人間の自律神経が緊張や興奮を促す交感神経が優位な状態から、脳がリラックスした状態である副交感神経が優位な状態にスイッチが切り替わる。これが一言でいうと、ストレス解消の仕組みになります。
涙を流せば、どんな涙を流してもいいわけではありません。ドライアイを防ぐ”基礎分泌の涙”や、タマネギによって反射で出る”反射の涙”は いくら流しても意味がありません。ストレス解消に効果があるのは、悲しいときや感動したときに流す“情動の涙”。脳科学的にみても「涙活」は、大いにやるべきなんです。
参加者からよく出てくる質問に、「どれぐらいの頻度で泣くのがベストなのか」があります。私は、1週間に1回をお勧めしています。涙は1粒流しただけで1週間ストレス解消効果が持続すると言われているぐらい、強烈なストレス解消効果があり、1週間に1回泣けば、ストレスフリーな生活が送れます。
「泣いていい」場所の提供
涙活イベントは、複数人集めてやっているのですが、それには理由があります。私たちは、泣きは伝播するものと考えています。「もらい涙」、「誘い涙」という言葉があるように、 隣の人が泣いているから、「ここで泣いていいんだ!」と思うような場作りをしています。
イベントの最後には、涙活タイムという交流時間を設けています。「類は友を呼ぶ」ということわざがありますが、類を涙(るい)ともじって、「涙は友を呼ぶ」。涙活体験の気づきをシェアしながら、泣きの空間を一緒に過ごしたからこそ、ここで本音の語り合いが始まります。
涙活イベントに参加した動機から始まり、どの場面で泣いたのか、なぜその場面で泣いたのかを話すことで、気持ちが楽になります。人が涙を流す瞬間、自分の大切にしている価値観が出ます。同じ場を共有したからこそ、自分のことを話せます。中には、涙友タイムで、泣き出す人もいます。ここにも泣きの場を生み出す仕掛けを作っています。
泣きのツボを知る
涙活体験では、スクリーンにプロジェクターを投影して、2~3分の長さの感涙映像を数本流しました。複数の短い映像を流すのは、理由があります。「泣きのツボは人それぞれ」という言葉をよく使います。人がどこで泣くかは、皆さん違うのです。人は何かの場面に涙を流すときに、その場面に自分の人生経験を投影します。歩んでいる人生が皆さん違うように、泣きのツボも違うのです。
そのため、参加者の皆さん全員に泣いてもらうために、いろんなジャンルの映像を流します。家族、動物、アスリート、恋愛、友情、大自然の風景など、少しでも参加者の泣きのツボに刺さるようにと多くの映像を流します。
涙活イベントの目指すものの一つとして、「自分の泣きのツボを見つけてほしい」というものがあります。泣きのツボがわかれば、”泣き習慣”をつけるべく泣きの題材探しがしやすくなるからというのが、その理由です。
動物モノのみに泣けたのなら、その人の泣きのツボは、動物です。イベントをきっかけに、動物を扱った映画を観たり、DVDを借りてきたりして、1週間1回泣く習慣をつけることができます。あるいは、涙友タイムの中で、他の参加者の泣きのツボを知り、その泣きのツボにチャレンジすることも可能です。
人は、他人の泣きのツボを知ることによって、その新しいジャンルに泣けるようになると思っています。なぜなら、そこに新しい解釈が入り、感情移入しやすくなるからです。涙活イベントの目指すもののもう一つの狙いは、「新しい泣きのツボを増やしてほしい」というものもあります。そうすることで、より泣きやすくなる感動体質に変わっていくのです。
かくいう私は、この活動を始める前は、まったく泣けませんでした。私は日々、泣きの題材を探しており、結果的に現在では、1週間に1回ぐらいのペースで泣いています。意識的に泣くことをしていたら、涙線がやわらかくなり、泣けるようになりました。泣きの効用の一つに、免疫力が上がるというものがあるのですが、この活動を始めてから、風邪をひかなくなりました。自らが、涙活の効果を実感しております。
以上の話を、涙の効用についてのレクチャーの場面で話しています。次回は実際に私が企業に出向いて行った涙活について、お伝えしようと思います。