電気式の火災警報器や熱感知器などの煙感知器は、1890年代に初めて発明されました。この発明は長年にわたって改良が重ねられ、イオン化式や光電式の煙感知器のような、より高度な設計に至っています。

  • 煙探知機

煙感知器の動作原理を理解する

現代の電子工学により、こういった煙感知器の設計は、シンプル、安定的、高い費用対効果が得られるものとなっています。煙感知器がAC電源式である場合は、一般的に9Vのバックアップ・バッテリが搭載されています。このため、煙感知器の設計は、AC/DCの電力供給量を少なくしてバックアップ時のバッテリ寿命が長くなるように、低消費電力を目的としておく必要があります。

イオン化式煙感知器は、放射線源(通常はアメリシウム241)を使用して空気をイオン化することによって動作します。煙感知器内に空気が入ると、放射線源によって空気分子が正と負のイオンに分けられます。煙感知器内のイオン化チャンバーには正と負の電極があります。図1で示しているようなチャンバー(Chamber)とソース(Source)です。

正イオンは負に帯電しているソースに誘引され、負イオンは正に帯電しているチャンバーに誘引されます。このような誘引によって、図1のようにコレクタ・プレート上に電圧が生成されます。煙感知器内に流入する煙の粒子はこのイオン化を妨げて、コレクタ・プレート上に生成される電圧を低下させます。このような電圧低下は、VOUTとして出力されます。感知器は、チャンバー内の煙を示すものとして電圧低下を監視します。VOUTはコンパレータまたはアナログ-デジタル変換器(ADC)に接続されます。

  • イオン化式煙感知器の動作原理

    図1:イオン化式煙感知器の動作原理

光電式煙感知器は、赤外線(IR)発光ダイオード(LED)とIR受信機を使用して煙を感知します。IR受信機は、IR LEDからの光を感知し、感知した赤外光の量に応じて一定量の電流を出力します。この電流は、電流を電圧に変換するためのトランスインピーダンス・アンプ(図2)に供給されます。トランスインピーダンス・アンプの出力は、信号を監視に適したレベルに増幅するために第2ステージのアンプに接続されます。煙がIRチャンバーに流入すると、煙によって赤外光が散乱してIR受信機による感知が妨げられます。この結果、IR受信機の電流の出力が変化し、最終的に第2ステージのオペレーショナル・アンプ(オペアンプ)の出力電圧が変化します。イオン化式煙感知器と同様に、コンパレータまたはADCによって、この電圧変化を監視して煙を感知することができます。

  • 光電式煙感知器の動作原理

    図2:光電式煙感知器の動作原理

マイコンで煙探知機を安価に実現する方法

ご覧のように、このような種類の煙感知器を設計する場合はオペアンプが必要です。ただし、これらの外部オペアンプによって、部品表(BOM)の項目が増え、プリント回路基板(PCB)のスペースが消費され、追加のコストが発生します。こうした課題の解決に向けTIでは、アナログ・ペリフェラルを統合し、このような負荷の軽減に有効な低消費電力に最適化された新しいMSP430マイコン「MSP430FR2355」を開発しました。

MSP430FR2355は、スマート・アナログ・コンボと呼ばれる4つの構成変更可能なシグナルチェーン・モジュールを搭載したペリフェラル機能を有しています。

各モジュールには、柔軟性の高い構成変更可能な12ビット・デジタル-アナログ変換器(DAC)やオペアンプが内蔵されています。汎用モード、バッファ・モード、非反転プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)モード、反転PGAモード、DACモードなど、数多くのモジュールの構成方法があります。このペリフェラルにより、設計時の追加コンポーネントの削減が可能になります。また、安定性を高めながら、全体的なコンポーネントのコストを節約できます。

このデバイスの拡張温度範囲(-40℃~105℃)は、煙感知器が動作する高温の環境に対応しています。ですので、MSP430FR2355を使用すれば、手軽に次世代の煙感知器を設計することができるようになります。例えば、イオン化式煙感知器を設計する場合は、図1のようなバッファ構成にスマート・アナログ・コンボを構成できます。

一方の光電式煙感知器を設計する場合は、図3のように2つのスマート・アナログ・コンボ・モジュールで構成できます。第1ステージはトランスインピーダンス・アンプ(TIAモード)で、第2ステージはゲイン・ステージ(PGAモード)です。スマート・アナログ・コンボはピコアンペアレベルの低リーク入力をサポートしており、電流測定精度の向上が可能です。

  • 光電式煙感知器へのスマート・アナログ・コンボ・モジュールの使用

    図3:光電式煙感知器へのスマート・アナログ・コンボ・モジュールの使用

煙感知器の設計をさらに強化するために、イオン化式と光電式の両方の手法に対してスマート・アナログ・コンボを使用できます。両方の設計を1つのマイコン(2つのモジュールを光電式の回路用、1つのモジュールをイオン化式の回路用)に導入し、さらに1つのモジュールを予備として確保できます。

光電式感知器の設計を強化したい場合は、波長の異なる2つのIRエミッタを組み込むこともできます。4つのモジュールをすべて(各IR回路に2つ)使用すると、測定の精度が高くなり、誤報の防止に役立ちます。

参考情報(英語)

アプリケーション・レポート

"How to Use the Smart Analog Combo in MSP430™ MCUs"
"How to Use the Integrated Operational Amplifiers on the MSP430FR2311."

ホワイトペーパー

"Smart Analog Combo Enables Tomorrow's MCU-Based Sensing and Measurement Applications."

ユーザーガイド

"MSP430FR2355 LaunchPad Development Kit User's Guide."

TI Designs

"MSP430FR2311 IR Reflection-Sensing Subsystem Design Guide."

著者プロフィール

Mitch Ridgeway
テキサス・インスツルメンツ

マイクロコントローラ事業部 アプリケーション・エンジニア