NTTは5月8日、2025年度の通期決算について発表し、説明会を開いた。連結での営業収益は対前年7044億円(5.1%)増の14兆4091億円、営業利益は同567億円(3.4%)増の1兆7062億円、当期利益は同370億円(3.7%)増の1兆370億円と、対前年で増収増益を達成した。営業収益は過去最高を更新。

EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization:税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えた利益)は同1840億円(5.7%)増の3兆4233億円。

  • NTT 2025年度連結決算

    NTT 2025年度連結決算

NTT 代表取締役社長の島田明氏は「これまで掲げてきた『New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN』という中期経営戦略は、『New value creation & Sustainability 2030 powered by AIOWN』として取り組みを強化する」と語り、2030年に向けた施策についても公表した。

  • NTT 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田明氏

    NTT 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田明氏

ネットワーク品質向上への投資が重荷、総合ICT事業は減益

2025年度通期の営業収益と営業利益の増減の要因を事業セグメント別に見ると、総合ICT事業ではモバイル通信サービスの減収に伴いコンシューマ通信事業も減収となったが、金融を中心とするNTTドコモのスマートライフ事業の成長や法人ビジネスの拡大により、結果的に対前年2450億円の増収。一方で、顧客基盤の強化やネットワーク品質向上に向けたコスト投下により785億円の減益となった。

顧客基盤の強化に対する投資の結果、MNP(Mobile Number Portability:番号そのままで乗り換え)が改善し、プラスに転じたとのことだ。

グローバル・ソリューション事業では、為替の影響により350憶円の減収の影響があったが、国内外の事業成長やデータセンターのREIT化の影響により、対前年で3659億円の増収と、同1643億円の増益を記録。

地域通信事業ではレガシービジネスの収入減が見られたが、法人ビジネスや光サービスが成長したことから、同979億円の増収と同119億円の増益だった。光サービスの純増数は、10ギガプランやマンション向けの全戸一括プランにより増加している。

  • NTT 2025年度決算 セグメント別の状況

    NTT 2025年度決算 セグメント別の状況

2026年度は増収予想も、当期利益は減益見通し

島田氏は続いて、2026年度の業績予想を発表。これによると、営業収益は対前年6509億円増の15兆600億円、EBITDAは同67億円増の3兆4300億円、営業利益は同67億円増の1兆7100億円、当期利益は同570億円減の9800億円を見込んでいる。

営業収益は総合ICT事業やグローバルソリューション事業を中心に、全セグメントで増収となる計画。EBITDAと営業利益はネットワーク収入の減少の影響はあるものの、法人向けビジネスやスマートライフの拡大によりカバーし増益となる計画だ。当期利益は支払利息の影響などにより減益となる予想だという。

「ネットワーク品質の改善に向けた取り組みは継続して強化し、ドコモMAXの拡大などを通じて長期利用者を中心とした強固な顧客基盤を構築していく考え」(島田氏)

  • NTT 2026年度決算の予想

    NTT 2026年度決算の予想

16期連続の増配、2000億円(上限)の自社株買いも発表

NTTは決算会見と同日に開催された取締役会において、2025年度期末の株主配当について、予想通りとなる1株当たり2.65円とすることを決議した。2026年度の年間配当予想は1株当たり対前年0.1年増の5.4円だ。16期連続での増配を予定している。

また、同社は資本効率の向上と株主還元の充実を図るため、2000億円14億株を上限とする自社株式の取得を行うことも決議した。取得期間は2026年5月11日~2027年3月31日の予定。

EBITDA4兆円目標を2030年度へ後ろ倒し、AIインフラ投資を強化

NTTは現行の中期目標の中で、2027年度にEBITDA 4兆円を掲げているが、既存事業における顧客基盤の強化に対する投資やトラフィック増によるコスト高騰など事業環境の変化により、目標達成は困難な状況だ。

これに対し同社は、従来の成長分野を「バリュー分野」、既存分野を「コネクティビティ分野」とし、バリュー分野の成長を加速させるとともに、コネクティビティ分野をAIネイティブなインフラである「AIOWN」へと転換させ、2030年度のEBITDA 4兆円達成を目指す。

  • 2030年度のEBITDA 4兆円達成に向けた取り組み

    2030年度のEBITDA 4兆円達成に向けた取り組み

2030年度のEBITDA 4兆円達成に向け、同社は以下の7つの取り組みを進める。

NTTデータとドコモビジネスを連携、国内法人事業を強化

AIの急速な展開を踏まえて、従来の人的リソースに依存するビジネスモデルから、AIを活用して顧客価値を起点とするビジネスモデルへと転換する。特に、AIによってNTTデータの人的リソースを確保し、NTTドコモビジネスと連携しながら高付加価値なインテグレーションの提供を推進する。

また、NTTデータとNTTドコモビジネスの商材を掛け合わせ、ソブリン性を確保したフルスタックなAIビジネスを提供することで、顧客基盤の拡大につなげる。

これにより、国内の法人向け事業として、2030年度までにEBITDA 1兆2100億円を目指す。

  • NTTデータとNTTドコモビジネスのシナジーを強化する

    NTTデータとNTTドコモビジネスのシナジーを強化する

AI・データセンターを柱とした海外事業の成長加速

ITサービス事業では、NTTデータが2025年12月に新設した「NTT DATA AIVista」を中心に、AIネイティブなビジネスを創出する。

NTT DATA AIVistaでは、AIエージェントを業務プロセスに組み込むために必要な業務ルール、各社のポリシーに基づく判断、業務フローの実行など業界知識を前提とした共通機能を備えたコアAIプラットフォームの構築を手掛ける。

また、引き続き需要が好調なデータセンター事業では、クラウドおよびAI推論の領域にフォーカスし、第三者資本も活用しながらハイパースケーラー向けの事業を中心としたビジネスを展開する。

これにより、海外の法人向け事業として、2030年度までにEBITDA 600億円を目指す。

ドコモ金融を軸にパーソナル事業を拡大

2026年7月1日に事業開始予定のNTTドコモ・フィナンシャルグループを中心として、決済と銀行を起点とした金融顧客基盤を成長させ、投資・融資・保険の利用促進により金融事業を成長させる。

また、dポイントやd払いなどdアカウント会員の基盤が持つデータとAIを組み合わせ、パーソナルエージェントやマーケティングソリューションの競争力を強化するという。

これらの取り組みにより、金融事業が同社のスマートライフ事業の成長を加速する要因となり、2030年度までにEBITDA 5100億円を目指す。

  • 金融事業の拡大を促進する

    金融事業の拡大を促進する

GPU・ネットワーク・電力を最適化、「AIOWN」を本格展開{#id8}

NTTは、今後のAI市場について「学習」よりも「推論」が中心になると見ており、GPUやネットワーク、電力を最適化したAIインフラ「AIOWN」の展開を進める考えだ。

コネクティビティ分野では、AIネイティブな次世代インフラの整備を進める。今後はAIの計算処理が学習から推論中心へと変わっていくことが推測される中、同社はGPUやネットワーク、電力などのリソースを最適化したインフラ「AIOWN」を展開する。

AI活用で通信事業の収益基盤を強化

同社はこれまで、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の下でAPN(All-Photonics Network)と光電融合デバイス「PEC」(Photonics-Electronics Convergence)の実装を進めてきた。

同社はAPNを2027年度までにすべての県庁所在地へ展開するとともに、ニーズを創出し全国へ面的に拡大するという。さらに、光電融合デバイスはパートナーとのエコシステムを拡大しながら、IOWNの社会実装を進める。

  • AIネイティブなインフラの強化に向けてIOWNの実装を進める

    AIネイティブなインフラの強化に向けてIOWNの実装を進める

通信事業の利益安定化によるキャッシュ創出力の保持

同社はコネクティビティ分野における当面の取り組みとして、コンシューマ通信事業の顧客接点強化とプロダクトの進化により、モバイル収入のARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)向上を目指す。

同時に、AIなどを活用したオペレーションの変革と生産性向上を図り、利益水準の維持を目指すとのことだ。

地域通信事業では、固定電話をはじめとするレガシー事業の収入減が見込まれることから、AIを活用したオペレーション変革や光ビジネス・法人ビジネス・新規事業の拡大によってEBITDAの増加を実現する。

  • 通信事業は着実な利益安定化を目指す

    通信事業は着実な利益安定化を目指す

宇宙・光量子コンピュータなど次世代事業へ投資継続

2030年度以降の持続的な成長を実現するため、モビリティや宇宙、光量子コンピュータなどの分野に対し戦略的な投資を継続する。

宇宙分野においては、IOWN技術を応用して防災領域や経済安全保障領域のビジネス拡大も期待できるとのことだ。

  • 将来の持続成長が期待される3分野

    将来の持続成長が期待される3分野