中国清華紫光集団傘下のNAND型フラッシュメモリメーカーであるYangtze Memory Technologies(YMTC)は、3D NANDの高性能化、高密度化を可能とする独自技術「Xtacking」を2019年以降に量産する予定の製品に導入する計画であることを発表した。

  • YMTCが独自開発したXtacking構造の模式図

    YMTCが独自開発したXtacking構造の模式図。赤色で表示された金属ビアの上側がCMOS周辺回路部分、下側がNANDメモリセル・アレイ部分 (出所:YMTC)

また、併せて同社CEOのSimon Yang氏が米国で開催されたフラッシュメモリの国際会議「Flash Memory Summit」にて同技術の詳細を発表したほか、同会議にて、「Best Innovative Flash Memory Startup」として表彰を受けたことも明らかにした。

  • 「Best Innovative Flash Memory Startup」のトロフィー

    Flash Memory Summitより「Best Innovative Flash Memory Startup」としてYMTCに贈られた記念のトロフィー (出所:YMTC)

Xtackingは、データI/Oとメモリセル動作の信号処理をするCMOS周辺回路と3D NANDメモリセル・アレイを別々のウェハに作製し、それらを張り合わせるというもの。下層の3D NANDと上層の周辺回路は、ウェハ全体に形成された数百万個の金属ビアを介して電気的に接続される。周辺回路には、NANDの半導体プロセスよりも微細なロジックプロセスを適用できるため、既存のメモリアレイと周辺回路を一体化させた製造方法よりもデバイス性能を向上できるとしている。

従来の3D NANDアーキテクチャは、周辺回路がチップ面積の20〜30%を占めることから、NANDのビット密度を低下させていた。将来的に、3D NAND技術が128層以上に進展すれば、周辺回路が全チップ面積の50%以上を占める可能性もあるとされているが、Xtacking技術を使用すると、3D NANDメモリセル・アレイと周辺回路を分けて積層できるため、既存の3D NAND技術と比べてビット密度を高めることが可能になると同社は説明している。

また、同技術を適用すると、NANDメモリセル・アレイと周辺回路を別々のチームで設計作業を行うことができるほか、デザインルールの異なる製造プロセスを適用できるため、製品開発時間が少なくとも従来よりも3か月ほど短縮、製造サイクルタイムも同20%短縮、そして市場へのアクセスタイムの短縮も可能となるため、経営面でも優位に立てるとしている。さらに、顧客の要望で周辺回路のカスタム化も容易に行なえるようになるため、ビジネスの幅も広げられると同社では、事情拡大に期待を寄せている。

同技術は2019年に大量生産を開始する予定の第2世代の3D NAND(32層品)から適用する計画だというが、すでに第3世代に相当する64層品の開発も進められているとのことで、こうした研究成果の一部が、今回のFlash Memory Summitで発表した形となる。

Yang CEOは「現在、(Samsung Electronicsが開発を進めている)世界最高クラスの3D NANDのI/O速度は1.4Gbpsが目標となっているが、業界の大多数のNAND I/O は1.0Gbps以下である。この技術を適用することで、NAND I/Oの速度はDDR4 DRAMと同等以上となる最大3.0Gbpsまで引き上げることが可能となる」とコメントしており、NAND業界のゲームチェンジャーになることを目指すとする。

YMTCの発表を驚嘆と危機感をもって報道した韓国

まもなく始まるであろう中国メモリ業界の猛攻に対し、もっとも危機感をもっているのはSamsungとSK Hynixという2大メモリ企業を有する韓国である。

今回、周回遅れと見ていたYMTCが独自の技術により韓国勢との差異化を図ろうとしたことに対し、韓国メディアは、YMTCの発表やFlash Memory SummitでのYang CEOの講演を、驚嘆と危機感をもって速報として伝えている。中央日報は、「中国半導体の空襲…『サムスンより速い32段NAND量産』」(8月9日付け日本語翻訳版の見出し)と題し、中国が驚異的な速度でNANDの開発を進めていることを危機感をもって伝えた。また、すでにYMTCが、64層3D NANDの試作品を中国内のIT企業に納品していることなどにも触れ、韓国の半導体業界にも、2019年の下半期には影響がでてくる可能性があることを指摘。64層3D NANDも2019年末には量産に移行することもできるとの見解を示している。

ただし、そうした脅威とする向きの一方で、ウェハを2枚用いるため、ウェハ2枚分のコストがかかること、ならびに積層工程が新たに追加され、生産時間が余計にかかることなどにも触れており、歩留まりがあがりにくく、量産は難しいとの見方も紹介している。

なお、台湾の経済日刊紙である經濟日報も、8月7日付で「紫光新記憶體技術震撼業界(中国紫光集団が発表した新メモリ技術が半導体業界に震撼を与えている)」との見出しで今回の取り組みを伝えており、Flash Memory Summitの開催地でもある米国を含め、これまでNANDを牽引してきた3地域ともに、中国の半導体メモリに対する研究開発への強い意欲を、脅威として受け止めた向きが多いようだ。