ここ数年、投資リスクの要因として話題になるのが「地政学リスク」。地政学リスクとは、特定の地域が抱える政治や軍事、社会的な緊張の高まりから、その関連地域はもちろん、世界経済の先行きを不透明にするリスクのこと。現在でいうと、中東や北朝鮮情勢が代表的なものです。

そんな時代になると、注目を集めるのが純金への投資。『有事の金』といわれますが、個人投資家は純金とどう付き合ったらいいのでしょう。ネット証券などでも取り扱うようになり、かつてより買いやすくなった金投資の代表的な方法、純金積立の最新事情を見てみましょう。

純金への投資は、あくまで資産の保全のためと考えよう

金は保有していても、利息や配当金を生み出すことはありません。例えば、株式投資は株価が値上がりしなくても配当金や優待品を受け取ることで一定の利回りは確保できますが、金は時間が経過しても購入した量が増えることはありません。

もちろん金価格も相場によって決まりますから、売却額が購入額を上回って儲かることはあります。しかし、逆に金相場が下落したら損をすることになります。金投資を始めるときには、まず、このことをきちんと理解しておくことが必要です。

では、なぜ、金への投資が注目されるのでしょう。それは通貨には裏付けとなる価値がありませんが、金は実物で世界共通の資産としての価値があるから。『有事の金』といわれるのはそのためです。その証拠に世界各国の中央銀行は外貨準備として大量の金を保有しています。

さらに金は資産としてだけでなく、宝飾品やコンピューターなどにも使用される今日の経済活動に必要不可欠な金属。しかし世界の金の埋蔵量は6万~7万トン、可採年数は20~30年程度(諸説あり)といわれる希少性の高いものでもあるのです。

金への投資は少額を長期間続ける『純金積立』が○

純金への投資というと金地金や金貨といった現物をイメージする人も多いでしょうが、これらを買うためにはそれなりにまとまったお金が必要です。小さいものもありますが手数料が高く、割高感が否めません。そこで現実的、かつ手軽な方法としておすすめなのが毎月1,000円程度から始められる『純金積立』です。

純金積立ができる主な会社をまとめたのが下表。かつては純金積立を取り扱うのは貴金属販売会社がほとんどで、年会費が必要など少額での投資には見合わないものもありました。しかし、ここ数年、ネット証券などの参入でグッと手軽な投資商品になりました。

取扱会社による違いを大きく分けると、ネット証券など金融機関の購入手数料は低めですが、現物で引き出すことができなかったり、引出手数料が高めだったりといったデメリットがあります。

それに対して貴金属販売会社の購入手数料は高めですが、現物としての引き出しは有利な仕組みです。また金の現物だけでなく、ジュエリーや工芸品といった金製品と交換することもできます。どこで純金積立をするかを検討するときは、まず会社によってこのような違いがあることを知った上で選ぶことが重要です。

純金投資は価格上昇で儲けを狙うというよりは、経済や政治の変動に備えて自分の資産を守るのが大きな目的。老後のお小遣いを少し増やすくらいの気持ちで、超長期間、無理のない少額で続けるのがよさそうです。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。