「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」のサンプル

バンダイは、キャラクタープラモデルの新ブランドとして「Figure-rise LABO」を、3月28日に発表した。第1弾はプラモでありながら成形色のみで肌の質感表現に挑んだ2018年6月発売予定「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」(5,940円/税込)で、29日には東京・ヨドバシAkibaにサンプルが展示され、多くの人が足を止めていた。

「Figure-riseLABO」は、バンダイが持つプラモデルの成形技術を発展させ、これまでのフィギュアやプラモデルでは実現できなかった表現を研究し、実現に向けて進化させていくプロジェクト。「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」では、フィギュアでも特に難しいとされる「肌」の質感表現がテーマに選ばれた。同商品では構成するパーツの厚みを変えることで、成形色の"透け"によって、肌の持つ赤みや透明感、陰影の美しいグラデーション、さらには頬のチーク、お腹のシャドウ、脚の血色を再現している。新ブランド発表会で公開された動画、そして公式サイトに画像が掲載されると、SNSを中心に驚きの声が上がった。

グッとくる肌表現の脅威

衝撃の発表から一夜。ヨドバシAkibaにサンプルが展示されているとの情報を得て、さっそくプラモデルコーナーに向かった。ガンプラコーナーの中央に展示された「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」は、プラモコーナーにありがながら高品質フィギュアにしか見えない……という、違和感そのものがこのアイテムの異彩ぶりを物語っているようだった。

最も目を引いたのが、前身である「Figure-riseBust」シリーズでは少し硬い印象があった肌の質感表現。とはいえ、「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」を見てから「Figure-riseBust」へと遡ったので、ことさら"硬い"と感じられるような見方をした上で、ということを付言しておきたい。

「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」は、まるで血が通っているかのような赤みと、お腹や背中のくぼみ、脇の部分の陰影の自然さ。そのリアルな表現がフィギュアと比べても高いレベルで再現されていた。極端に言ってしまうと、このキャラクターが「ホシノ・フミナ」だと知らない人でもグッときてしまうだけの立体物としての存在感。これまでフィギュアでは人の手による彩色で表現されていたこの「グッ」が、成形色のみで実現されている。まずはそのことに驚いた。

進化の速さ

「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」に至るまでの技術の進化については、内容はもちろんだが、それが実現された速度についても特筆すべきものがある。

昨年5月に開催された「第56回 静岡ホビーショー」にて、「Figure-riseBust」の1周年を記念した特集コーナーが設置された。「Figure-riseBust」は、バンダイホビー事業部がガンプラなどで培った技術の粋を集めた新技術「レイヤードインジェクション」により、表情豊かなキャラクターをプラモデル化してきたブランドとして、注目されていた。

2016年6月に発売された『機動戦士ガンダムSEED』のキラ・ヤマトとアスラン・ザラがシリーズの第1弾。そしてその瞳表現の到達点として、顔と瞳が一体になった「レイヤードインジェクション」を実現させた「Figure-riseBust 初音ミク」の発売が2017年8月である。それから1年を待たずして、肌表現を飛躍的に向上させた全身モデルを発売するそのスピードは、驚異的というほかない。

進化は継続中

「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」は、8%税込で5,940円。同サイズ、近い質感のフィギュアからすると格段に安いが、普段ガンプラなどプラモデルの価格帯に慣れている身からすると、「思ったより……」という印象があるのも正直なところだ。だが、新ブランド発表会で明かされたように、肌表現のために新たにブレンドした素材が開発されていること、金型自体が同社のエース級の技師によって特別に作られているものであることなどを考慮すると、5,940円という価格もかなり無理をしたものであるように思われる。

とはいえ、新ブランド「Figure-riseLABO」の価値は、「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」だけで決まるのではなく、今後の展開によってこそ測られるべきなのかもしれない。「Figure-rise」の光のごとき進化の速度を考えると、後続シリーズはより驚くべきものが送り出されてくる気がしてならないからだ。

「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」はやや髪の表現がベタっとした印象があるが、さっそく第2弾「Figure-riseLABO初音ミク」(研究中)では、髪と衣装の透け成形に挑んでいるのだという。「Figure-riseLABO」で蓄積された技術は、将来的にガンプラなどへの応用が見込まれている。しかし、第1弾にしてこれほど心を躍らせてくれる「Figure-riseLABO」が突き詰められたその先に、どんな到達点が待つのか。それをまずは楽しみに待ちたい。

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