iPhoneやiPadなどのiOS機器の操作で今ひとつわかりにくかったものがあります。それは、ファイルの操作です。例えば各クラウドストレージごとにそれぞれのアプリを使う必要がありました。また、クラウドストレージ上のファイルを標準のメールで送信するのにも限界があったのです。

iOS11からは、その名も「ファイル」という標準アプリが新登場しました。一言で言えば、iOS機器上でファイルを簡単に操作し、また各種クラウドサービス上のファイルを一元管理しようとするものです。順に説明していきましょう。

「ファイル」の画面はパソコン的

各種のクラウドストレージを一元管理することが可能な「ファイル」ですが、具体的には、「iCloud」「OneDrive」「Googleドライブ」「Dropbox」のそれぞれについて、ファイルを参照したり、ファイル名を変更したりすることができます。また各クラウドストレージサービス内のファイルを縦断的に検索する機能が提供されています。

  • 「ファイル」の画面。各種クラウドサービスのアイコンがならぶ

アプリを開いて最初に感じるのが、画面デザインがパソコン的だということです。iOSではあまりファイルを意識することはありませんでした。それは、アプリごとにデータを管理するのが基本であり、それ以外のものはクラウド保存されたものを逐一参照するスタイルだったからです。

ただ、最近はOffice365のiOS用アプリが提供されたり、あるいは、DropboxのようなクラウドストレージサービスのiOS用アプリが登場したりすることで、iPhone上でそれらを利用した、またはそこに保存されたファイルを参照##編集する機会が大幅に増えています。「ファイル」の登場の背景には、そういった事情もあるかと思われます。

  • 画面下の「最近使った項目」をタップしたところ。最後に作業したファイルがどれかがわかって便利

ファイル自体に各種操作ができる

本アプリではファイル名の変更やファイルのコピー、移動、削除などが簡単にできます。

  • ファイルをタップしたところ。ファイル名が変更できる

やり方も簡単です。まず短くタップするとファイル名が変更できます。また、ロングタップすると、「コピー」「削除」「情報」「共有」などができます。アイコン上部に出てくる選択肢からどれかを選ぶだけです。

  • ファイルをロングタップしたところ。「コピー」「複製」「名称変更」「移動」とある。複製は同じクラウドサービス上にファイルを複製すること

  • メニューの続き。「今すぐ削除」「共有」「タグ」「情報」。「共有」はアクションアイコンと同じ。タグは各種の色やタグの割り当て

このようにクラウドストレージ上のファイルを操作可能ながら、操作方法自体はiOSの作法であるところが「ファイル」の便利さだと言えます。

しかし、肝心の検索機能は筆者がテストしたところうまく動作しませんでした。各種クラウドストレージを縦断的にキーワード検索できればかなり便利ですが、想像したような検索結果、すなわち特定文言を含むファイルが各種ストレージそれぞれからヒットするようなことはできなかったのです。これは後日のアップデートに期待したいところです。

標準のメールからファイル添付したメールを送信可能。

これまでのiPhoneでは、ファイルの添付をしたメール送信は不可能でした。できるのは、カメラロールからアクションアイコンをタップしてメールを送信先にして画像を添付することでした。また、GmailのアプリではGoogleドライブ内のファイルを添付できましたが、これは、GmailアプリのユーザーでかつファイルがGoogleドライブにある場合に限られます。

しかしこの「ファイル」のアプリを使うとファイルの送信が飛躍的に便利になります。例えば、Dropbox内の特定ファイルを指定して、標準のメールから送信可能になります。やり方は簡単で、「ファイル」からDropboxを開きファイルを指定してからアクションアイコンをタップ、標準のメールを送信先に指定して本文を書いてから送信すればOKです。同様の手順で、Googleドライブ、OneDriveなどのファイルも添付できます。

  • 「Open in Dropbox」「リンク」。リンクをコピーし、メールなどにペーストできる

  • ファイルを閲覧してからアクションアイコンをタップしたところ。送り先に「メール」を指定

  • メールが開いたところ。ファイルが添付されている

出先でファイルを送信するときにはこれからはクラウドストレージのアカウントと「ファイル」アプリがあれば困らないわけです。

便利さを享受するための準備とは

この「ファイル」はそれ自体の機能としては課題もあるものの、ポイントはユーザー側の準備にもあると思われます。例えば、利用している各種クラウドストレージサービスについて、アプリをインストールしてIDとパスワードを入力しておく。すると「ファイル」でもすぐにそれらが使えるようになります。また、タグの機能を活用しましょう。

ファイルの画面では一度にアイコンが9つ程度しか見えません。つまりパソコンのファイル一覧画面と同じ感覚で操作しようとしても、スクロールなどの手間がかかりすぎるわけです。そこで、各ファイルにタグ付けをして、すばやくアクセスできるようにしましょう。こうすれば、タグ付けされたファイルをすぐに参照できます。

  • タグ一覧の画面。並び順を変えることもできる

タグは、「レッド」「オレンジ」「イエロー」「グリーン」「ブルー」「パープル」「ブルー」「グレイ」の8色+「重要」「ホーム」「仕事」の3種類の合計11種類あります。どの色をどんな意味にするのかがポイントです。これは標準の「メモ帳」に書いて保存しておきましょう。

今後は、クラウドストレージ上のファイルがiPhoneさえあればメールで送信できるようになりました。また、ファイルのリネーム、コピーなども簡単です。もし使ったことがなければまずは使ってみましょう。

舘神龍彦

舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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