この夏、漫画原作を実写映画化したパターンでは相当な話題作だった『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が、公開後に“本編のそこそこの尺”を切り取って世に出してしまうというなかなかの捨て身な宣伝展開をするなど、いまだ日本では漫画原作の実写映画化の際にはハラハラする出来事も少なくない。
その点、アメリカ映画界ではアメコミ原作映画の実写映画化がファンの歓待で始まって終わるイメージが強く、その最新作を“待望の”という表現で素直に紹介していいほど。特に8月25日に日本でも公開となった『ワンダーウーマン』は全世界待望レベルのメガヒットを記録中で、事実ファンもファン以外も大歓待で迎え、新星ワンダーウーマンに惜しみない賛辞を贈る。
とにかく、凄まじい人気だ。8月14日時点で全米興行収入は402,201,085ドル(約442億円/1ドル110円)を超え、世界レベルの興行収入でも797,101,085ドル(約876億円)を突破しているほどで、先日来日を果たしたパティ・ジェンキンス監督は、女性監督として歴代ナンバーワンの興行収入を獲得した映画監督として名を残すことに。そして興収面だけでなく、主人公のワンダーウーマンのタフなキャラクターや世間知らずのチャーミングな姿が女性層を中心に支持を集め、全米では2017年の最多Tweet映画となっているのだ。
そういう話題作ではあるものの、ストーリーの大枠はいたってシンプルだ。主人公は、女性だけの島で育ち、男性を見たことさえない好奇心豊かなプリンセスのダイアナ。ある時、偶然現れたパイロット風の男スティーヴ(クリス・パイン)と出会ったことで外の世界の存在と“戦争”を知ったダイアナは、人々の争いを止めるため最強の美女戦士、ワンダーウーマンとして立ち上がる。彼女の目的は無益な争いを繰り広げている人間たちの戦争の阻止であり、そのために生まれ育った故郷も捨ててしまう。無償の愛がモチベーションになっている感動的なストーリーに、“アメコミ史上最高傑作”との呼び声がかかるほど。
ワンダーウーマンは善の象徴のようなキャラクターだけに、彼女のキャラクターが大勢の共感を集めるほど説得力に満ちている根拠は、演じるガル・ガドットの魅力による部分が大きい。来日したジェンキンス監督も、「ワンダーウーマンは優しさや思いやりや愛情深い要素を彼女自分の中に持っているけれど、ガル・ガドットの最高なところは、そういうものを彼女自身が資質として持っているところなの。皆、ワンダーウーマンをタフにしようとするけれど、わたしはそういうことをしなくても、すでにガルは自信家でタフだから必要ないと思ったの」と諸手を挙げて大絶賛。ワンダーウーマンを演じるべくして生まれたようなガル・ガドットの勇姿を観て、新たなスーパーヒーローの誕生を実感するはずだ。
そのガル自身も、「この役は本当にすごいの。あらゆる愛、思いやりや真実、正義、平和を表現している。彼女を好きにならない理由なんてどこにもないの。正直言って、ワンダーウーマンを作り出し、この映画がこんなに成功したのは、ここにいるファンのみなさんのおかげだと思っているわ。そして、このすばらしい役と演じる機会を与えてもらったことにとっても感謝しているとしか言えないわ」と7月のコミコンでコメント。キャラクターと演じ手の魅力が重なり合い、それを演じる本人も観ている観客も、皆が愛する唯一無二のスーパーヒーローとなったと言っていい。夏映画のラストとして、こういう『ワンダーウーマン』のような素敵な映画が待っていることのシアワセを映画館で存分に噛みしめてもらいたい。
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