ハチミツを食べてボツリヌス菌による食中毒を起こしてしまうように、赤ちゃんや子どもが摂取する時に注意すべき食べ物があります。特にどんな食べ物の、どんな時に気をつければ良いのでしょうか。
今回は食中毒を引き起こしがちな食べ物について、2人の子どもを育てながら予防医療の普及活動をしている、管理栄養士の宇野薫さんに聞きました。
Q.赤ちゃんに絶対にあげてはいけない食べ物はありますか?
1歳未満の子に与えてはいけない食品として、ハチミツがあります。ハチミツの中のボツリヌス菌が、赤ちゃんの腸の中で増殖して毒素をうみだすと、麻痺が生じ、便秘、泣き声が弱い、まぶたが落ちるなどの症状が出る「乳児ボツリヌス症」になってしまうことがあるからです。ボツリヌス菌は家庭調理での加熱によって死滅させることができません。絶対に与えないようにしてください。
Q.他に菌が多く含まれているのはどんな食べ物ですか?
全ての食材において言えることですが、生ものには菌が多く含まれているので、乳児や幼児向きではありません。生肉や生卵、生魚には、サルモネラ菌や大腸菌などの細菌が多く含まれ、摂取すると食中毒を起こしやすいので、必ず加熱して与えるようにしましょう。加熱する際には、中まで十分に火を通し、生の部分が残らないよう注意してください。
また、生ものを直接赤ちゃんに与えなくても、調理した手指や器具を介して食中毒が起きてしまうこともあるので、生ものを扱った後は洗浄と殺菌を十分に行いましょう。
Q.お刺身は生魚ですが、何歳から食べさせても大丈夫ですか?
生魚による食中毒としては、細菌性食中毒の「腸炎ビブリオ」や、寄生虫の「アニサキス」などがあります。しかし加熱をすることで、ほとんどの菌や寄生虫は死滅します。そのため、離乳食の間は、刺身用の魚もしっかりと加熱調理をして与えてください。
2歳くらいになると離乳食もほぼ完了し、胃腸も発達してきているので、少量ずつお刺身などの生魚を与えてみてもいいでしょう。魚の脂には、DHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれているので、子どもたちにぜひ摂取してもらいたい食べ物でもあります。与える際は必ず鮮度の良いものを選び、購入してから1日以上たったら、生のまま与えないようにしましょう。
Q.他にも注意すべき食材はありますか?
ふぐの内臓に含まれる毒のような、自然毒にも注意が必要です。身近なものだと、じゃがいもがあります。じゃがいもの芽や緑色の部分には「ソラニン」という天然毒素が含まれていて、これを摂取すると吐き気や下痢などの症状が出て、食中毒になることがあります。芽や緑色の部分をしっかりと取り除くことが大切です。
また、ミニトマトのヘタの部分には細菌が多く存在しているので、ヘタを取ってしっかり流水洗浄してから食べるといいでしょう。
Q.子どもの食事選びについて、コツがあれば教えてください
保育園や幼稚園で提供されている、給食のメニューを見てみてください。これまでに、できるだけ避けた方がいいと話した食べ物は、おそらく出ていないと思います。子どもに食べさせてもいいかどうか悩んだら、「保育園・幼稚園では出されているかな?」と一度考えてみてください。子どもの食事選びの一助となるかもしれません。
管理栄養士 宇野薫
看護師の母、糖尿病の祖父の影響で食事の重要性を痛感。予防医療に貢献したいと管理栄養士を志す。女子栄養大学卒業後、病院、高齢者施設での経験をもとに、疾病予防、アンチエイジングなど、なりたい自分になるための栄養指導に従事している。現在、「子どもの食と栄養」についての講義や、妊婦・女性を対象にした栄養教育に関する研究をする傍ら、聖マリアンナ医科大学東横病院で栄養カウンセリングを担当しているほか、一般社団法人Luvtelliのメンバーとしても活躍。予防医療の中でも、特に"母子健康"に貢献することで、元気な赤ちゃんを1人でも増やせるよう取り組んでいる。2児の母。