作ってから食べるまでの時間が長いお弁当。温度、湿度共に上がるこれからの時期は、食中毒に注意が必要です。しかし、具体的に何をすればいいか分からないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、食中毒を防ぐお弁当の作り方について、2人の子どもを育てながら予防医療の普及活動を行っている管理栄養士の宇野薫さんに聞きました。
Q.おかずの調理で注意することはありますか?
基本的なことですが、素手で食べ物を扱わないことが重要です。人の手には、黄色ブドウ球菌と呼ばれる常在菌が付着しており、素手で触ることで食べ物に移り、食中毒をもたらす危険性があります。手はしっかりと洗浄、殺菌して、清潔にしてから調理に取り掛かりましょう。
さらに、清潔な調理器具を使用することが大切です。できれば熱湯消毒したまな板や、包丁を使ってください。
そして、おかずはしっかり中まで火を通しましょう。前日に調理したものをお弁当に入れる場合は、熱を加えることで細菌を殺すことができるので、再加熱してください。味付けは濃い目にすると、腐敗を防ぐ効果が期待できます。
Q.お弁当箱におかずを詰めるとき、気をつけた方がいいことはありますか?
調理したおかずやごはんが、しっかりと冷めてから詰めてください。温かいものを詰めてしまうと、細菌の増殖しやすい30~40℃になる時間が長くなってしまうからです。
また、細菌は水分を好むので、汁気のあるおかずはペーパータオルで拭いてからカップに入れるなどして、水分をなるべく残さないようにしましょう。
保冷剤を入れて周りの温度を下げたり、お弁当の中に抗菌シートを入れたりするのもいいでしょう。
Q.食中毒を防ぐ、お弁当の容器や箸などの洗い方のコツがあれば、教えてください。
毎日使うお弁当箱は清潔さを意識して、隅々まできれいに洗ってください。スポンジの硬い面はお弁当箱を傷つけ、雑菌を増殖させる原因になってしまうので、柔らかい面を使いましょう。できれば熱湯などで消毒し、その後にしっかりと乾かすことが重要です。
細菌は湿気を好むので、水分が残らないように注意してください。お箸などの器具も、使うたびに水分を拭き取り、清潔な状態を保つようにしましょう。
Q.お弁当に詰めるおかずは、どんなものがオススメですか?
水気の少ないおかずがオススメです。例えば海苔和えや胡麻和えのように、水分を吸うような食材を合わせるのもいいと思います。削り節やおぼろ昆布なども同様に水分を吸ってくれます。汁気のあるおかずを入れる場合はカップに入れたり、詰める前にしっかりと水分をしぼったりするといいでしょう。
また作り置きしたおかずをカップに入れて冷凍し、お弁当箱に詰めることで、保冷剤としての役割も期待できます。その際、インゲンの胡麻和え、ほうれん草ともやしのナムル、かぼちゃ煮やひじきの煮物、五目豆など、解凍しても水分の出にくいものを選ぶようにしましょう。
レモンや柚子、カボスやお酢、梅干しなど、殺菌に役立つといわれる食材を使うのも手です。
Q.お弁当作りをしているパパ・ママに伝えたいことは?
人の手に付着している黄色ブドウ球菌が食品に移り、食中毒をもたらすケースが非常に多いのですが、これは防げる食中毒です。基本的なことですが、お弁当を作る前にしっかりと手洗い、除菌をすることを心がけましょう。夏場の暑い時期は、おにぎりもラップを使うと安心です。
食べる前に加熱をすると、殺菌効果が期待できるのでオススメですが、できれば長時間の常温保存は避けていただきたいです。お弁当は作って時間がたってから、子どもの口に入るもの。そのことを意識して、お弁当作りに取り組んでみてください。
管理栄養士 宇野薫
看護師の母、糖尿病の祖父の影響で食事の重要性を痛感。予防医療に貢献したいと管理栄養士を志す。女子栄養大学卒業後、病院、高齢者施設での経験をもとに、疾病予防、アンチエイジングなど、なりたい自分になるための栄養指導に従事している。現在、「子どもの食と栄養」についての講義や、妊婦・女性を対象にした栄養教育に関する研究をする傍ら、聖マリアンナ医科大学東横病院で栄養カウンセリングを担当しているほか、一般社団法人Luvtelliのメンバーとしても活躍。予防医療の中でも、特に"母子健康"に貢献することで、元気な赤ちゃんを1人でも増やせるよう取り組んでいる。2児の母。