『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』や『魔法少女育成計画』など様々なアニメのタイアップ曲を歌うアーティスト・ナノ。卓越した歌唱力で、国内外問わずユーザーの支持を集めるバイリンガルシンガーは2017年5月31日、デビュー5周年記念アルバム『The Crossing』を発売する。今回は5年の集大成となる本アルバムについて、ナノ本人にインタビュー。アルバムのコンセプトや音楽に対する素直な想いなどを聞いた。
音楽はマンネリにならない
――今回のアルバムは5周年記念ということですので、アルバムのことに加え5年の軌跡についてもお伺いできればと思います。この5年、様々な楽曲のリリースのほか、国内外問わずライブも行ってきました。そもそもデビューするきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、動画サイトに日本語の歌を英訳して歌ったものをアップしたことでした。その動画を見たディレクターが声をかけてくれたんです。元々プロの音楽家を目指していたのですが、どうすればなれるのか悩んでいた時にいただいたお話だったので、正直驚きを隠せませんでしたね。ただ、望んでいたことではあったので、「夢が叶った」という気持ちでいっぱいでした。
――デビューアルバムがオリコンデイリーランキングにランクインするなど、世間的にも鮮烈なデビューでしたが、本人にとっても衝撃的な出来事だったんですね。デビュー以来、ナノさんはアニメタイアップ曲を歌うことも多いですが、元々アニメはお好きだったのでしょうか?
アメリカに住んでいたので多くの作品を見ることはできませんでしたが、見られる範囲で見ていました。独特の文化である日本のアニメは、とても魅力的でしたね。特に、音楽と映像が融合したオープニングやエンディング曲。日本のアニメソングはエンターテインメント要素が強く、非常に魅かれました。初めて邦楽に触れたのもアニメでしたね。
――アニメのオープニングやエンディング曲が邦楽を聞くきっかけになったんですね。
はい。ただ音楽自体が好きなので、J-popもクラシックも幅広く聞いていますよ。
――なるほど。先ほどお話を伺った邦楽との出会いが大きな転機のひとつだと思いますが、この5年間で最も転機だったなと感じた出来事は何でしょうか?
そうですね……正直、ひとつに絞るのは難しいです。本当にどの出来事も転機でしかない。海外でライブしたこともそうですし、アニメタイアップ曲のお話をいただき、その作品の世界観の歌を歌えるのも感動的なことですし。音楽って、不思議なことに感動が薄れないんですよね。
――常に新しい発見や転機がある。
マンネリにならないんです、音楽は。
立ち止まることで見えた交差点
――音楽に対する熱い想いがひしひしと伝わってきました。5月31日は先ほどお話いただいた転機のひとつになるであろう5周年記念アルバム『The Crossing』が発売しますね。
今回のアルバムはただ5年を振り返るということではなく、むしろこの先に繋ぐためのものになっています。「これがナノだ!」ということではなく、新たな一面を発見できるアルバムにしたいという想いで制作しました。
――タイトルである『The Crossing』にはどのような意味が?
交差点や踏切を渡るという意味がある『The Crossing』には、2つの想いを込めました。ひとつは踏切を渡り次の場所に進むという気持ちで5周年に臨むということ、もうひとつは一旦足を止めることで見えた「交差点」をどの方向に進んでいこうか、というワクワクにも似た不思議な心境をタイトルで表現しています。
――見えた「交差点」とは?
5年を振り返ってみると、今まで一方通行だと思っていたアーティスト活動の道が、実は様々な方面からの「Crossing」だったと気が付いたんです。この気づきがきっかけで、進める道がたくさんあるということも見えてきました。今後は今まで歩んできた道をそのまま進んでもよいし、他のルートに行ってもよいし、後ろにいこうと思えばいける……。様々な道があることがよく分かりました。視野が広がったのかな。アルバムのジャケット写真もスクランブル交差点で撮影したのですが、今はまさにそんな心境です。
――これまでの活動を振り返ることで、様々な道が見えてきたんですね。本アルバムにはバラードやエレクトロ系など、多彩な楽曲が収録されていますが、それも様々な道が見えてきたことから?
そうですね。こういうことにも挑戦したい、新しい自分を発見したいという想いも込めて制作しました。アルバムには趣向の異なる新曲が8曲収録されていますが、そのうち6曲は、過去に楽曲提供してくださった作家の方々と再びご一緒させていただいています。
――SHO from MY FIRST STORYさん、中西航介さん、buzzGさん、ゆよゆっぺさん、Powerlessさん。
はい。その作家の方々とまたご一緒したいと思ったのは、過去と今の違いをより明確に楽しんでもらいたかったからです。どこか懐かしいけど、新しいサウンドになっている……。自分のことをよく知っている作家さんに作曲していただくことは、非常に意味のあることでした。もちろん、今回のアルバムからナノのサウンドを聞いていただく方にも楽しめるようになっていますよ(笑)。