日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏は4月17日、「働き方改革」への最新の取り組みや方向性について記者会見を行った。

日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏

これまで日本マイクロソフトでは、「働き方改革」の取り組みとして、「いつでも、どこでも、活躍できる」環境実現を目指してきた。その一例がテレワークへの取り組みだ。「6年前に固定電話を廃止して、完全にクラウドベースの通話に移行。品川オフィスに移転した5年前から約27%(総額27億円)のコスト削減になりました。働き方改革として非常に大きなインパクトがあったと考えています」(平野氏)。

また、今後については「これまでは、働き方"を"改革して、いつでもどこでも仕事ができるような取り組みをしてきたが、今後は働き方"で"改革を推進して、ビジネスをもっとインパクトがあるものにしていきたい」と話した。

AIを活用して時間の使い方を改革

では、具体的には働き方でどのような改革をしていくのか。平野氏は「これからは社員の主体的な改革を、最新のクラウドとデバイスでサポートしていく」と方針を語り、具体的な施策について3点を挙げた。

1点目は「office365」のアプリケーション「My Analytics」を活用した改革だ。My Analyticsでは、時間の使い方と共同作業をする社員を確認することができる。このMy Analyticsによって、社員が使用するoffice365のビッグデータを分析し、それに対してAIが社員一人一人にアドバイスすることで、新たな気づきを与えるという。

My Analyticsのイメージ

My Analyticsでは、社員がメールの作業時間、残業時間、会議の時間など一週間にどのような時間の使い方をしたのかを把握できる。例えば、会議の時間や傾向を見ることで、効果の低い会議時間を削減し、確保できた時間を企画や顧客訪問などに充てる等の見直しが可能。AIから、より良い時間の使い方がアドバイスされるという。

また、社員同士が誰と仕事を共にしているのかも把握できる。例えば、上司や他部署の人など、誰と一番共同作業しているのかも、個人単位で見られる。誰と多くの時間を共有しているのかあるいは、誰ともっと共有した方がいいのかといった働き方のレコメンドをAIから受けることができる。

My Analyticsを使った同社4部門(人事・ファイナンス・マーケティング・営業)の41名を対象に、2016年12月~2017年4月に検証したところ、無駄な会議時間が27%(3,579時間)削減された。これを従業員2,000人相当に換算して、業務時間削減効果を一般的な残業時間換算した場合、年間7億円の経費削減に。さらに、集中して作業する時間が50%増加したという。

チャットベースでチームの仕事を効率化

2点目は、共同作業の改革として、Office365のうち、チャットベースで仕事を進めるコミュニケーションツール「Microsoft Teams」を使用することで、より効率の良いビジネスの成果を出すという取り組みだ。

Microsoft Teamsは、例えばプロジェクトごとにチームでチャットワークをすることが可能。これにより、固い形式ではなくカジュアルな会話から、いろんなアイデア発想・ビジネスの提案を、部門横断で作業することができる。また、売上データや議事録などのデータをシェアして、情報共有することも可能だ。

「Microsoft Teams」

このほか、会議のセッティングにはAIとのチャットのやりとりでできる「秘書BOT」を導入し、会議の調整にかかる時間の削減を図っている。例えば、チャットボットからの「会議に誰を招待するか」という質問に対して、招待するメンバーの名前を入力すると、参加メンバーが参加可能な日時候補が自動で提示される。また、決定するとインビテーションが送られ、メンバーのアウトルックにもスケジュールが入るという仕組みとなっている。

「秘書BOT」

遠隔地にいる社員との会議を可能に

3点目では、Microsoft製のコラボレーションデバイス「Surface Hub」を活用して会議を改革し、より生産性のある会話・意思決定を図るというもの。

同社では1月から、「Surface Hub」を社内のオープンスペースや会議室に30台設置しているという。Surface HubにはWindows10が搭載されているため、会議の場面でoffice365の活用が可能。また、タッチ操作やペン入力によって議論を進めながらリアルタイムでデータの修正をすることができる。

「Surface Hub」を使った会議のイメージ (Skype for Businessを使用して通話ができる)

さらに、ネットワークを介して遠隔地にいる社員に確認をとりたいときは、「Skype for Business」を活用してビデオ通話をしながら、議論しているExcelやPowerPointなどの資料データを共有して、会議を進行することができる。これにより、一回の会議で課題を持ち帰らずに終わらせることを実現し、効率を上げることを目指すという。

日本マイクロソフトの働き方改革ムーブメント

日本マイクロソフトでは2014年から「テレワーク/働き方改革週間」を毎年開催しており、2016年は833社の法人が賛同した。これまでの活動を活かし、7月に「働き方改革推進会社ネットワーク」(仮称)を設置することを発表した。ネットワークによって、これまでのような年に一度の取り組みではなく、継続的にいつでも連携できるような環境にしていくという。

平野氏は「2020年のオリンピックに向けていろいろな動きがあると思いますが、働き方推進会社として、政府や自治体が取り組むことに積極的に参加していきたいです」と意気込みを語った。