まとめと考察

ということでここまで読んで頂けた読者に感謝したい。飛ばして最後に来た方も、考察だけはお読みいただければ幸いである。

一言で言えばRYZEN 7 1800XというかRYZEN 7は、まだ荒削りな部分は目立つし、必ずしも全てのシーンでIntelを凌ぐ性能を発揮できるわけではない(というか、まだ微妙に追いついてない)部分はあるものの、かなり強力な製品に仕上がっているのは疑う余地もないということだ。

確かにSingle Thread性能が要求される部分では、まだ同一周波数のIntel Coreには若干及ばない。したがって、DirectX 11のゲームが主体とか、Office関係のワークロードのSingle Thread的な使い方(Wordとか)では「今一歩」ではある。

一方で、Multi-Tread化された環境、つまりエンコーダとかDirectX 12のゲーム環境ではすでに遜色ない性能といえる。絶対性能ではやや及ばない部分もあるが、なにしろ安い上に消費電力もずっと低い。ランニングコストまで考えたら、RYZEN 7は圧倒的に有利である。実際、よくここまで製品を仕上げたものだと思う。

細かいところで言えば、きれいにアクセスが済むところでは馬鹿っ速なのに、そこから外れると急に性能を落とす、というややピーキーな面が見える(といってもかつてのWillametteとかBulldozerほどではないのだが)ので、アプリケーションによって体感性能にちょっと差が出るだろう。

とはいえこれは新アーキテクチャの最初の製品であり、幸いなことに改良できそうな場所は一杯ある。次世代になるZen2(以前はZen+という名前だった)でこのあたりが改善される事を期待したい。

現行、Intel系(特にKabyLake)側のメリットは「GPUを搭載している」ことで、GPUそのものは大した性能とはいえないのだが、同時に利用可能なMedia Encoderは非常に強力である。これを利用しているユーザーには、いまのところRYZEN 7に乗り換えるメリットは特にないだろう。

逆にソフトウェアエンコーダを多用しているユーザーにとっては、RYZEN 7は非常に魅力的なアップグレードパスになる。もちろんCore i7-6900系はさらに高性能だが、こちらはかなり高価だし、消費電力も大きい。特にこの消費電力の大きさは、いまとなってはちょっとデメリットと考えざるをえない。

さて、Intelも殴られたままでは済まさないだろうが、運が悪いことに手近に殴り返すための弾がない。おそらくは価格改定、つまり値下げをしてくると思われる。実際に海外ではそうした報道が既に始まっており、AMDが訴求のポイントに挙げた「価格性能比の高さ」をずらす方向で対応することになるかと思われる。長期的にはこちらで紹介したBasin Fallsの世代で本格的な巻き返しを図る、というあたりだろうか。

不安要素が残るとすると、いつものように供給体制である。現時点ではどの程度潤沢に、CPUやマザーボード、Socket AM4対応クーラーが出回るかはちょっとわからない。これが十分に出るとすれば、結構なムーブメントになりそうな性能を備えている。