推奨回路トポロジ

この伝達関数を実現するソリューションには、図3に示すように4チャネルD/Aコンバータを使い、各D/Aコンバータの出力を、サミング・アンプの入力につなぐ方法があります。

図3:4チャネル16ビットD/Aコンバータを使うトポロジ例

サミング・アンプの伝達関数は、次のようになります。

このトポロジは、2個のICだけで構成されるため、部品点数が少なくて済むほか、比較的簡単な制御ロジックと、1本のSPI(シリアル・ペリフェラル・インタフェース)バスで4チャネルのD/Aコンバータを制御できます。D/Aコンバータのチャネルは、それぞれ 異なるゲイン誤差、オフセット誤差やフルスケール誤差を持っていることから、図4aに示すように、システム全体のINL(積分非直線性)は増しますが、各D/Aコンバータを直線領域のみで動作させるように較正することで、図4bに示すように、伝達関数全体のINLを低減できます。各D/Aコンバータは異なるゼロ・コード誤差やフルスケール誤差を持っていることから、最大限の性能を得るためには、それぞれのつなぎ目で較正を実施する必要があります。

図4:(a)4チャネルD/Aコンバータを使うトポロジの伝達関数、(b)同トポロジで較正を行った場合の伝達関数

次に、下に示す第二のトポロジでは、一度に一回のD/Aコンバータの入力コード変化のみで、0~10V出力、18ビットの伝達関数を得る設計を行いました。この回路では、必要な出力を得るためにD/Aコンバータからの0V、2.5V、5Vまたは7.5Vの出力電圧を足し合わせることが必要です。第一のトポロジで行ったような4チャネルのD/Aコンバータ出力を使って設定電圧を作る代わりに、第二のトポロジでは、図5に示すように1個のD/Aコンバータの2.5Vリファレンス出力を可変ゲイン・アンプ回路に加える、可変リファレンスのトポロジでサミング・アンプを使い、D/Aコンバータ出力に加算します。

図5:可変リファレンス・トポロジの例

この可変リファレンスのトポロジは4チャネルD/Aコンバータを使う手法に対して、いくつかの重要な利点を備えています。まず、D/Aコンバータが1個で済むため、ゲイン誤差やオフセット誤差は18ビットの伝達関数全体に渡って一定であり、4チャネルのトポロジと比較して良好なINL特性を得ることができます。

この可変リファレンスのトポロジは、出力範囲のつなぎ目で、4チャネルD/Aコンバータのトポロジとは、やや異なる問題を発生します。4チャネルのトポロジでは、各D/Aコンバータのゼロ・コード誤差が足し合わされることから、つなぎ目ではDNLは低くなりますが、この可変リファレンスのトポロジでは図6aに示すようにゼロ・コード誤差とオフセット誤差が追加のDNLを発生します。次に、このシステムを較正するためのアルゴリズムの詳細について説明します。図6b は較正後の特性です。このD/Aコンバータを直線領域のみで動作するように較正した場合、システムのフルスケール出力は10Vにはなりません。シミュレーションではフルスケール出力はおよそ9.88Vになることがわかります。

図6:(a)可変リファレンス・トポロジの伝達関数、(b)同トポロジで較正を行った場合の伝達関数

この可変リファレンスのトポロジは、4チャネルD/Aコンバータのトポロジよりも基板1枚あたりの部品点数が多くなりますが、1チャネルのD/Aコンバータで済むことから、部品コストを削減できます。