妊娠を希望しているカップルの6組に1組が何らかの不妊治療を受けたことがあるといわれている昨今。不妊治療は一般化してきているものの身体的精神的負担が大きいのに加え、治療費も高額で経済的な負担も大きくなりがちです。そんな中、不妊治療の治療費を保障する保険が登場。どんな仕組みでどのような人にメリットがあるのか、みてみましょう。
不妊治療はどれくらいの費用がかかるの?
子供が欲しいけれどなかなかできないと悩んでいる人にとって、不妊治療は頼みの綱です。とはいえ、治療は長期にわたるケースも多く、また治療状況によっては仕事をセーブせざるを得ないなど経済的負担が大きくなりがちです。
さらに公的健康保険がきかない治療も多く、治療費自体も高額です。費用は治療内容によって大きく異なりますが、人工授精などで数万円、体外受精や顕微授精では数十万円かかるといわれています。これが1回で済めばそれほど大きな負担にはなりませんが、妊娠するまで毎月継続的に治療を受けるとトータルでは数百万という単位になることも珍しくありません。
公的健康保険は対象外。その代わり国の助成が受けられる
不妊治療は病気の治療ではないことから、基本的に公的健康保険の適用は受けられません。子宮や卵巣など生殖器に異常が見られ、それが原因での不妊では病気の治療となるので公的健康保険が適用されますが、それ以外は基本的に全額自己負担となります。ただし、治療費が高額になることから、国や自治体の助成金制度があります。
国の助成制度は、体外受精や顕微授精など高度不妊治療に対して行われています。1回の治療につき初回は30万円、2回目以降は15万円まで助成されます。男性不妊治療に関しては、平成28年4月以降に15万円の助成が上乗せで受けられるようになっています。
助成を受けられるのは所得が夫婦合算で730万円未満。年齢は43歳未満の女性です。助成が受けられる回数は、治療初日に40歳未満の人の場合は通算で6回、40~43歳未満は通算3回までとなっています。
これとは別に各自治体で独自に助成を行っている市区町村もあります。国の助成の窓口が住所地の市区町村役場となっているので、申請をするときに市区町村の助成制度も併せて確認するといいでしょう。
不妊治療の保障が受けられる保険ってどんな内容なの?
助成が受けられるとはいえ、やはり本格的に治療を始めれば、費用の自己負担は大きくなりがちです。治療が実を結び妊娠できたとしても、その後は当然のことながら出産育児費用がかかります。大きな経済的負担を少しでもカバーしたいと考える人にとって検討できる手段のひとつが保険です。
ただ、これまでの一般的な医療保険では、通院治療がメインの不妊治療の保障はカバーできませんでした。そこで、不妊治療を受けたときに給付金が受け取れる保険(※)が新たに登場しました。
※日本生命「ニッセイ出産サポート給付金付3大疾病保障保険 "ChouChou(シュシュ)!"」
(2016年10月2日発売開始)
この保険はがん・急性心筋梗塞・脳卒中の三大疾病保障保険に不妊治療の保障を特約としてセットした保険で、特定不妊治療を行ったときに給付金が受け取れる仕組みです。
「特定不妊治療」とは、体外受精や顕微授精などのことで、該当する不妊治療を受けたときに最大で12回まで給付金が受け取れることになっています。給付金額は当初6回は1回当たり5万円、7回目からは1回当たり10万円です。給付金を受けたかどうかにかかわらず、出産したときには出産給付金、満期時には満期金が受け取れるのもこの保険の特徴です。
不妊治療の保険で注意したいこと
注意したいのは、加入後の治療開始時期。加入してから2年間は給付金が受け取れないことになっているので、不妊治療を始める直前に加入しても保障は得られません。ある程度リスクが予想される人は、早めに加入しておく必要があります。
この保険は満期金がある貯蓄性のある保険のため、保険料は高めです。また不妊治療のリスクをカバーするために加入する場合、満期を迎えると三大疾病の保障もなくなってしまいます。それらの保障も重視するなら、途中で保障が満了してしまって大丈夫かどうか、保険料や保障の期間、保障内容などよく納得した上で加入することが大切です。
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堀内玲子
ファイナンシャルプランナー。証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て93年に独立。96年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。