東急東横線はかつて、渋谷駅で地下鉄とは直通しておらず、地上の駅から横浜方面へ発車していた。2013年3月から東京メトロ副都心線と相互直通運転を行うようになり、東横線渋谷駅は地上から地下へ移った。その跡地をどうするか。鉄道事業だけでなく不動産開発事業にも力を入れている東急電鉄にとって、課題となっていた。

渋谷駅南街区の工事の様子(写真左)。渋谷駅を出入りする東京メトロ銀座線の電車も眺められる(同右)

10月24日、旧東横線渋谷駅および線路跡地、その周辺に建設される高さ180m、延床面積11万6,700平方メートルの大規模商業施設について、施設名称が「渋谷ストリーム(SHIBUYA STREAM)」に決定した。「渋谷ストリーム」とはいかなる施設か。

「次代の流れを生み出したい」との思いを込めた施設名称に

施設名称の発表に合わせて行われた記者発表会で、東京急行電鉄都市創造本部開発事業部の杉井勇太氏は、「渋谷という地のポテンシャルを生かしたプロジェクトです。新しいモノやコトを創り出す"クリエイティブワーカーの聖地"をめざします」と説明した。

「渋谷ストリーム」という名称は、施設の前を流れる渋谷川や、旧東横線渋谷駅の線路跡地のゆるやかなストリートの流れを表現している。と同時に、「ここから次代の流れを生み出したい」という思いもこめられている。

渋谷駅周辺の将来像を示した模型(写真左)と「渋谷ストリーム」の建物模型(同右)

「渋谷ストリーム」のオフィスロビー

渋谷駅南街区の低層部

東横線の地上線跡地に建てられるのはどんな建物か。1~3階は商業施設、4階はクリエイター向けのインキュベーションオフィスがメインとなっている。コワーキングスペースやスモールオフィスがあり、企業・個人のコラボレーションをめざす。自転車通勤をサポートするためのサイクルカフェも4階に設けられた。6階はカンファレンスルーム、9~13階はホテル、14~35階はオフィススペースとなる。

オフィススペースはクリエイティブワーカーが気持ちよく活動できる場所をめざし、設計された。5階のオフィスロビーだけではなく、4階のインキュベーションオフィスともゆるやかにつながり、アクティビティが感じられる場所となっている。この施設は渋谷駅のすべての改札からダイレクトにアクセスできるようになるという。

小宮山雄飛さん、渋谷の「ストリートから生まれる文化を大切にしたい」

記者発表会に登壇した小宮山雄飛さん

今回の記者発表会では、他にも渋谷宮下町計画「渋谷キャスト(SHIBUYA CAST.)」が発表された。こちらは渋谷駅から離れているものの、クリエイターの職住近接型の働き方をめざす施設として、共同住宅やオフィス、シェアオフィス&カフェが同じ建物に入るという施設となっている。

渋谷区観光大使を務めるミュージシャンの小宮山雄飛さんも記者発表会に登壇。「ストリートから生まれる文化を大切にしたい。地域を結ぶおもしろいものできたらいい」と話した。渋谷の地形の話にも触れ、「駅を中心にドーナツ状に文化が広がっている」と紹介した上で、「活躍しているクリエイターと次世代クリエイターが存在し、次をどう育てていくかが建物に組み込まれている」と分析していた。

渋谷駅周辺の開発は今後も進む。不動産デベロッパーとしての東急は渋谷に「文化」を生み出し、鉄道会社としての東急はその渋谷に働く人を乗せていく。