ダイハツ工業の新型軽自動車「ムーヴキャンバス」は、未婚女性と親の同居世帯を狙って企画されたという。ダイハツはなぜ、こんなにニッチな商品を送り出したのか。そのためにどんなクルマとしたのか。将来性はあるのか。今の日本社会の状況を踏まえながら検証したい。

ダイハツのムーヴキャンバスは“超ニッチ”なクルマだ

“日本の今”から導き出したクルマづくりの方向性

ムーヴキャンバスの報道関係者向け試乗会に参加して、もっとも印象に残ったのは、クルマそのものよりも、試乗前に行われたプレゼンテーションの内容だった。

話はいきなり、近年の日本女性の行動特性から始まった。社会進出と所得が増加しており、クルマを含めて、世帯内で商品を選ぶ際の決定権も高まっているというのだ。さらに今後も、政府がアベノミクスの成長戦略の一つとして「女性が輝く日本」を掲げていることから、女性の就業率や指導的地位への就任の増加が見込まれているという。

一方で女性の晩婚化が進み、親と同居する30~40歳代の女性は多くなっている。こうした世帯が増えた結果、未婚女性の軽自動車ユーザーのうち、親と同居している人の割合は増加しており、その比率は約8割に上っているそうだ。そういった人の半分以上は、クルマの購入資金を親と折半するか、あるいは全額出してもらい、多少高価であっても気に入った車種を選ぶ傾向が強いという。

綿密なユーザー分析を披露したダイハツ

そこでダイハツは、クルマの購入時に親が重視する機能や基本性能と、娘が重視するデザインや品質を両立したクルマを送り出せば、買い物から旅行まで母娘が行動を共にし、家庭円満につながるのではないかと考えた。そんな想いで送り出したのがムーヴキャンバスだ。

ダイハツがここまで日本の女性のライフスタイルを調べ上げているとは思わなかった。でも言われてみれば、腑に落ちることがいくつかあった。