あなたの家の愛猫の一番好きなものは何ですか? 日本の猫に好きな食べ物アンケートをしたら、必ず上位に入るであろうものがかつお節です。おやつとして、食欲がない時のスパイスとしてかつお節をフードにかけている方も多いと思います。しかし、かつお節を与える際は、いくつか注意すべきことがあります。
高すぎるミネラルが泌尿器に良くない
カツオを燻(いぶ)して乾燥させて作るかつお節は非常に硬く、栄養が濃縮された食品です。特にたんぱく質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。この中で注目すべきはミネラルです。ミネラルにはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リンなどがあります。ミネラルは体に必要な要素ですが、摂取しすぎると当然健康に良くありません。
腎臓はミネラル調節をする臓器です。よって、過剰なミネラルの摂取は腎臓に負担がかかります。特に猫は慢性腎臓病、尿路結石などの泌尿器の病気が多い動物なので心配です。
マグネシウムを摂りすぎると、尿路結石の1つであるストルバイト(尿酸アンモニウムマグネシウム結石)の発生率を高めることがわかっています。
かつお節に含まれるマグネシウムは100gあたり70mg
かつお節に含まれるマグネシウムは100gあたり70mgです。他の魚介類よりも高めですが、かつお節は乾燥して水分が抜けているので、ある意味当然です。実際にかつお節を猫にあげる時は、1gもフードにかければ結構な量になります(マグネシウムは0.7mg)。
かつお節10gはかなり量が多い
通常のキャットフードのマグネシウム量はだいたい乾燥状態で0.1%ほど。よって、1日50gのキャットフードを食べる猫は約0.05g = 50mgのマグネシウムを摂取しています(簡易的に計算しています)。
フード中のマグネシウム量が0.15%(50g計算だと約75mg)を超えるとストルバイト結石の発生率が高まることがわかっています。しかし、かつお節を上記のフードに1g加えても50.7mgなので、その影響は微々たるものでしょう。
しかしかつお節を10gあげると、どうなるでしょう。マグネシウム量はトータル57mgになり、危険量まではいきませんが、ぐっと上がりますね。実際かつお節10gはかなりの量ですが、かつお節大好きな猫であれば食べきれる量ではあります。かつお節は単体ではあげず、フードに混ぜるふりかけのようにして使いましょう。
ねこまんまの反省を生かして
キャットフードが一般的になるまで、日本ではねこまんま(残飯にかつお節と味噌汁をかけたもの)が猫のエサとして与えられていました。ねこまんまは塩分などのミネラルの量が多すぎるので、当時の尿路結石のできる猫が非常に多かったです。
これはかつお節だけが悪いのではありません。人間用に味付けされた残飯も塩分が高く、栄養バランスが猫に合っていませんでした。愛猫には、バランスの摂れたキャットフードを主食として与えましょう。
猫用かつお節とは
実は猫用かつお節には2種類あり、人間用とほとんど変わらないものと、減塩処理をしているものがあります。上記のようにおやつとして適量与えるだけであれば健康上大きな問題はないので、人間用のかつお節のパッケージが変わっただけ、というものもあるんですね。
まとめ
かつお節は確かにミネラルの量が多いですが、乾燥させたものなので、ある意味当然といえます。 ふりかけとして使う程度の量であれば、猫の健康に大きな影響を与えるほどではありません。日頃のお楽しみとして、病気の猫の食欲増進として、うまく使ってください。ただし、尿路結石や腎臓病を患っている猫に与える場合は、主治医の獣医さんと相談してくださいね。
(画像と本文は関係ありません)
■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み今年帰国。現在2016年5月に猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialists開院に向けて準備中。