目は顔の重要なパーツです。ビューラーでまつげを上げてマスカラでできるだけまつげが長くなるようにしたり、アイライナーや目をくっきり見せるコンタクトレンズを使用したり、アイプチを使って、一重まぶたを二重まぶたにしたり。アイメイクに余念がない女性も多いのではないでしょうか。
彼女たちからすれば「目を大きく見せたい」「目が大きい方がかわいく見える」と考え、アイメイクに力を入れるわけですが、男性からはいったいどういう風に見えているのでしょうか。そもそも、本当に男性は目がぱっちりした女性が好きなのでしょうか。
男性の「養護欲求」を引き出す「幼児性の特徴」
目が大きいということは、女性の魅力をアップさせる要因であることは間違いありません。Cunninghamという研究者は、顔の構造特徴と対人魅力の関係を検討する中で、魅力には3つの手がかかりがあることを指摘しています。その中の1つに「幼児性の特徴」というものがあり、「大きな目・小さな鼻・小さなあご」などが魅力の要因だというのです。
男性は誰かを守ってあげたい「養護欲求」が強いといわれており、養護欲求は相手の幼児性の特徴によってさらに引き出されます。もともと動物の世界で子どもは弱い存在。大人が守ってあげなければ死んでしまい、その種は絶滅してしまいます。そこで子どもは「幼児的な特徴」によって大人の"守ってあげたい、かまってあげたい"という気持ちを引き出し、自分を養護させようとするんです。いわば、進化の中で生まれた生き残る術でしょうか。
これは、実際に年齢的に幼くある必要はなく、あくまで身体的な特徴として幼ければいいのです。その意味で男性は、「目がぱっちりした女性が好きなのではなく、目がぱっちりした女性に惹きつけられてしまう」のだといえるでしょう。
目の大きさは単体でなく他のパーツとのバランスで決まる
そう考えると、生まれながら目がぱっちりした女性は得かもしれません。だって何もしなくても目がぱっちりしているので、おのずと男性は惹きつけられてしまいます。しかしそうではない女性も落胆する必要はありません。化粧によって目を大きく見せることは可能だからです。
冒頭で言ったビューラーでまつげを上げ、マスカラでできるだけまつげが長くするという行為は、心理学の「錯視」という目の錯覚を利用して目を大きく見せる方法です。人は決して、具体的な数字として目の大きさを見ているのではありません。まつげとの関係、その他の鼻やあごなどとの距離との関係の中で判断していきます。よって、化粧によって目を大きく見せることは可能です。
化粧の中でもとりわけアイメイクが重要視されているのは、このように目と魅力が深い関係にあるからなんですね。
※写真と本文は関係ありません
著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。