自然派石鹸や化粧品を製造・販売している「LUSH(ラッシュ)」。同ブランドでは「フレッシュハンドメイドコスメティクス」にこだわり、新鮮な野菜や果物などを主原材料にすべての製品を手作りしているという。また、「みつばちマーチ」「天使の優しさ」などのオリジナリティあふれる商品名も人気を集め、若者を中心にファンも多い。
イギリスに本社を置く同社は、2013年にロシアで施行された「同性愛宣伝禁止法(反同性愛法)」への抗議活動に代表されるように、様々な社会問題に会社として取り組む「キャンペーンカンパニー」という一面も持つ。
同日本法人であるラッシュジャパンは1月23日~2月14日の期間、セクシュアル・マイノリティを支援する活動「WE BELIEVE IN LOVE キャンペーン - LGBT 支援宣言-」を実施する。「LGBT」とは、「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシュアル」「トランスジェンダー」などの性的少数者の総称だ。「LGBT調査2012」(電通総研/2013年11月5日)によると、日本人の5.2%(20人に1人)がLGBTであるにも関わらず、カミングアウトの難しさや異性婚者と同等の法的保証や権利を享受できないなどの問題が山積みとなっている。
ラッシュジャパンが「どんなカタチの愛も素晴らしい」をテーマに行う活動は、社内のLGBT支援活動と国内店舗でのキャンペーンだ。14日には、LGBTに対する社員の理解を深めるための研修会が実施された。
LGBTが自分らしく働くことは難しい?
研修会の講師は、LGBT活動家の東小雪さんと増原裕子さん。2人は東京ディズニーリゾートで初の同性挙式をしたカップルだ。会場のラッシュジャパン キッチンと品川オフィスには、講習を受けるために160名の社員が集まった。
研修は、両名の体験談を交えての「LGBTとは何か?」という基礎講座からスタート。「同性同士では結婚ができない」「共同名義でローンを組めない」「パートナーに財産を残せない」といった問題や、「自分を肯定できない」「偏見を恐れて言い出せない」「いじめ・精神疾患」などの生きづらさが紹介された。また、社員向け研修ということで、LGBTの人が自分らしく働くことの難しさについても説明がなされた。
「LGBTの中には、会社にカミングアウトできない人も多くいます。そのため、会社でアイデンティティを隠すことに苦痛を感じたり、悪気ない"からかい"に傷つく人も存在します。そこからメンタルヘルスに不調を来し、うつ病などになったとしても、人事にはカミングアウトしていないので、本当の原因を伝えることができません。他にも同性カップルでは相手の身内に不幸があった場合、忌引休暇を取れないなどの問題が起こりえます。LGBTの人が『自分らしく働くこと』はすごく難しいことなのです」(東さん、増原さん)
「同性間のパートナー登録」制度を開始
同社は既にリクルーティングポリシーの差別禁止規定に「性的指向や性的自認等によって差別しない採用活動をする」という記載の追加や、応募者データの性別欄撤廃などのLGBT支援の取り組みを実施している。
そして23日より新たに実施される社内制度改革が「同性間のパートナー登録」だ。この制度は、同性間のライフパートナーに、異性婚者と同様の結婚祝い金支給や結婚休暇の付与を行うというもの。登録には「パートナー届」を人事に提出する必要があるが、会社がパートナーを「配偶者」とみなし、慶弔休暇や育児休暇、配偶者出産休暇等も取得可能になるのである。
人事 採用マネージャー 塔村育子さんは「ラッシュジャパンは、意識改革の前に会社の制度を改革することから始めています。23日より開始する『パートナー登録』は、社員の同性パートナーを会社が配偶者として認めるというもの。当事者の社員が生き生きと働き、非当事者の理解が進むことを目的としています」とコメントしている。
社会を変えるためにまずは自社の制度を変えることからスタートすることを決めたラッシュジャパン。同キャンペーンの対外施策としては、23日より全国約140のラッシュ店頭にLGBT支援宣言のボードを設置し、賛同者に手書きでハートマークを書いてもらう活動や署名収集、ハート型の商品を手にとってSNSでシェアしてもらう活動が行われる予定だ。