国際労働機関(ILO)はこのほど、2014/2015年版「世界賃金報告」を発表した。それによると、賃金成長率は世界的に停滞し、金融危機前の伸び率を下回っていることがわかった。

世界の平均賃金成長率を見ると、2008年に発生した金融危機前は約3.0%だったが、2013年には2.0%に低下。先進国に限ると、2006年以降1%前後で推移してきたのに対し、2012年には0.1%に落ち込み、2013年も0.2%と低迷を続けている。

先進国では金融危機の一時期を除き、労働生産性(就業者1人当たりが生み出す商品・サービスの価値)の伸びが賃金成長を上回る長期的な傾向が継続。格差の拡大は、特に先進国において労働分配率の低下、資本分配率の上昇に転換され、勤労者世帯に得られる経済成長の分け前は一段と減少しているという。

同報告書では、平均4~36%の男女賃金格差が、高収入層では絶対値でさらに拡大することも判明。例えば、2010年の欧州の数値で見ると、男女それぞれ下位10%の所得者層では女性の月収は男性より約100ユーロ少ないのに対し、上位10%ではこの差は700ユーロ近くに達していた。同様の傾向は報告書が分析対象とした世界38カ国のほぼ全てで確認されたという。

欧州の賃金所得階層別男女賃金格差の説明できる部分と説明できない部分の平均(出典:ILO駐日事務所Webサイト)

また、男女賃金格差には、教育水準などの「説明できる部分」と労働市場における差別を推測させる「説明できない部分」の2つがあり、この説明できない部分を消去すると、スウェーデンやブラジルなど、38カ国中半分近くで女性の方が賃金が高くなる逆転現象が起きると試算している。

一部の国について、男女賃金格差の説明できない部分を消去する前と消去した後の平均賃金。先進国(注) 2010年データ(出典:ILO駐日事務所Webサイト)

一部の国について、男女賃金格差の説明できない部分を消去する前と消去した後の平均賃金。新興経済諸国・途上国(注)中国については2009年、ベトナムについては2010年、チリについては2011年、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルー、ロシア、ウルグアイについては2012年データ(出典:ILO駐日事務所Webサイト)