日本では、古くから「目は口ほどにものをいう」ということわざがあります。同様の言葉は英語にもあったりするのですが、目は人間の喜怒哀楽の感情をあらわしており、何もしゃべらなくても、目から感情がわかると意味です。今風にいえば、「目ヂカラ」でしょうか。目で好きな人に好意などを伝えるということもありますよね。
そんな目ですが、人の魅力にも大きく影響します。それがわかっているからこそ、世の女性たちは黒目を強調するコンタクトレンズを使用したり、ビューラーやマスカラで目元を強調したりするわけですよね。ですが、物事には何でも適量というものがあります。スイーツだって、甘いほうがいいからと砂糖を入れすぎたらおいしくないですよね。同じように、アイメイクだってあなたの魅力を最大に引き出す適量があるんです。そこで今回は瞳について、学術的な研究などを参考にしながら解説していきたいと思います。
瞳の大きさと女性の魅力
シカゴ大学教授だったエックハルト・ヘスの研究によれば、実際よりも瞳のサイズを大きく加工した写真と、小さくした加工した写真とを男性に見せて、その女性の魅力を評価させたところ、男性たちは、写真の瞳のサイズの違いには気づいていなかったものの、瞳の大きな女性に対して、より女性的でかわいいと評価したのです。その一方で、瞳が小さな女性に対しては、冷たくて、自己中心的だと評価したそうです。
つまり、瞳の大きさと女性の魅力の関係は、科学的に証明されているのです。ですが、冒頭でもいったように、大きければ大きいほどいい、というわけではありません。コンタクトレンズメーカーのジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケア カンパニーが、白目と黒目の比率を少しずつ変えた画像を利用して魅力の変化を調査したところ、瞳の中の白目:黒目:白目の比率が「1 : 2 : 1」だと、「1 : 3 : 1」の比率よりも圧倒的に魅力的だと認知されたということが明らかになりました。
最近では、コンタクトレンズだけではなく、整形手術で黒目を強調する方法などもあります。ですが、ここでもバランスが大切になってくるようです。
また、カラーコンタクトレンズで瞳の色を変えることも、オシャレの一部として一般化してきました。ですが、プラハ・カレル大学准教授のカレル・クライナーの研究では、人は青い瞳よりも茶色い瞳に信頼感を抱くということがわかっています。これは、欧米での研究のため、青い瞳よりも茶色い瞳にということになるのですが、日本人はおおむね茶色い瞳の人が多いわけです。そのため、無理に瞳の色を変えない方が、むしろ魅力的だったんだともいえます。
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著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。