ファッション誌、ゴシップ誌、マンガ誌と、女性向けの雑誌のほとんどには、占いコーナーがありますよね。街の手相占いに並んでいるのも、女性がほとんどだったりします。世間を見渡すと、女性の方が男性よりも占い好きが多そうです。どうして、女性は占い好きなのでしょうか。その理由を、心理学者の平松隆円さんに解説していただきます。
男女で思考の傾向に違いが……
女性の方が男性よりも占い好きというのには、論理的に物事を考える傾向にあるかどうかが、影響していると考えられます。東京学芸大学の三田雅敏氏らの研究によれば、ひとの思考パターンは、胎児期におけるアンドロゲンというホルモンの働きにより決まっており、男女によって明らかに違うパターンがあらわれるといいます。
具体的には、男女で思考の違いに傾向があり、男性は論理的で分析に優れ、几帳面でものごとを整然と処理するタイプに、女性は直感や感覚でものごとを判断するタイプになりやすいといわれています。
つまり、占いという、科学的な根拠が示されていないもの、裏付けがないものに対して、男性は信じる気になれません。ですが女性は、なんとなく当たっているという程度でも、自分が納得できればじゅうぶんに信じるに値します。そんな男女の思考の違いが、占い好きかかどうかに影響を与えているのです
誰かに相談したい女性
ほかにも、よく男性は「自分の運命は自分で切り開く」という言葉を口にしたりしますよね。これは、男性が誰かに支配されるのを嫌うということを意味しています。むかしむかし、狩猟に出かけることが多かった男性は、自らの力でほかの誰よりも競って成果を上げる必要がありました。そんな競争心が、今にも残っているんでしょう。
それに対して女性の場合、自分が不安な状況に置かれているとどうしたらいいかわからないから、誰かに相談したくて占いに耳を傾けます。これは、男性とは異なり、いつも誰かと助け合って子育てや食事の準備をしていました。そんななかでは、なにか問題が起こるとみんなで話し合って、相談して解決策をみつけていたに違いありません。そんな太古の行動や心理もまた、今の占い好きかどうかに影響を与えています。
ところで、よく女性芸能人の方が占い師などに熱心に傾倒してしまい、通常の社会生活が送れなくなってしまったというニュースが報道されます。男性からすると、科学的根拠のない占いで「あなたは○○だから、△△しなさい」と言われると反発してしまいますが、女性の場合は不安があって相談しているため、同じように言われると、それを解決の手段として鵜呑みにしてしまいやすいのかもしれません。その結果、マインドコントロールではないものの、占い師の言うことしか聞かないなどという状況が生み出されてしまうのです。
著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを経て、現在はタイ国立チュラロンコーン大学講師。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』(水曜社)は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。ほかに『黒髪と美女の日本史』(水曜社)など。