ぶりっ子な女性、どう思いますか?

テレビCMには、さまざまなタレントが登場し、商品を買いたくなるように宣伝しています。ですが、それがすべての人には好感を持たれない場合もあります。

たとえば、「金麦」(サントリー)のCM。このCMには、男性に媚びているような、いわゆる「ぶりっ子」な女性が登場します。男性からの好感度は高いものの、同性である女性からの評判は良くないようです。どうして、ぶりっ子な男に媚びるような女性は、同性から嫌われやすいのでしょうか。そのあたりの心理を、心理学者の平松隆円さんに解説していただきます。

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ぶりっ子というと、 それは男性の前で無知なふりをして甘えている、弱々しく、しかもわざとらしいほどにかわいらしさをアピールしている女性のことですよね。 古くは松田聖子さんなどが有名でした。松田さんにお会いしたことがないの実際の彼女の性格は知りませんが、若い頃はぶりっ子というイメージだけで同性からの評判は良くないこともあったような気がします。

男性は女性を「守ってあげたい」という欲求が強い

さて、ぶりっ子とは基本的には自分の見られ方をコントロールする印象管理の一つです。つまり、男性に対して無知で弱々しい存在にみられたいわけです。なぜ、そうするのか。男性は女性に比べ支配欲求が強く、相手を思い通りにしたいという気持ちがあります。

と同時に、相手を守ってあげたいという養護欲求も強いのです。欲求は食欲や睡眠欲と一緒です。満たされないとストレスになり、なんとか満たそうと試みます。つまり、支配欲求や養護欲求を満たしてくれる女性というのは、食欲における食事のように、男性にはなくてはならないものなのです。

女性にはぶりっ子の元のキャラクターがわかる

そのため、ぶりっ子は男性受けがおおむね良くなります。ですが、ここで改めて考えてみると、ぶりっ子は印象管理の一つです。つまり、化粧と同じなんです。同性である女性からすると、化粧をした顔を見ただけで、その女性の素顔の想像がイメージつきますよね。

本当はブスなのに、化粧できれいに化けたなというやっかみと批判。それがぶりっ子についても、その女性の元のキャラクターが手にとってわかるために、かわいい子ぶってと批判の対象となるんです。同性ゆえに元がわかるからこそ、そのギャップの大きさが嫌われる理由となるんです。

では、どうして金麦のCMはわざわざ女性受けの悪いぶりっ子を演出しているのでしょうか。それは、金麦のターゲットが女性ではなく男性だからです。もちろん、女性も買ってくれればいいのですが、万人受けするCMは、結果的にターゲットが不鮮明になってしまいます。だからこそ、男性の評判だけを狙ってぶりっ子を演出しているのだと思います。

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを経て、現在はタイ国立チュラロンコーン大学講師。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』(水曜社)は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。ほかに『黒髪と美女の日本史』(水曜社)など。