『花より男子』のなぞを徹底解明するこのコーナー。今回は、作品に登場した道明寺とつくしの密室パターンと、つくしの気持ちの盛り上がりの様子を検証してみたい。

 2人の初めての密室は、道明寺が無理やり設定した初デートのときに登場。雪の中で待ちぼうけを食った道明寺は、閉じ込められたエレベーターの中で高熱を出す。コートを体にかけ、ひざまくらをして看病するつくしに対して、俺さま道明寺が初めて素直に謝罪の言葉を述べるというエピソードだ。この時点でつくしは花沢類のことが好きだったが、道明寺をかわいいと思うようになっている。つくしの気持ちはこの密室で一歩、道明寺に近づいたようだ。

 カナダにある道明寺の別荘に行ったときは、逆につくしが命を救われる。雪の中に倒れていたつくしを見つけた道明寺は、近くにあった監視員の小屋へ。後に総二郎にからかわれるように「山小屋とかでありがちに裸になってあっためあっちゃたり」することになる。つくしは恥ずかしさのあまり道明寺のことを「犬」と思い込もうとしながらも、同時に彼の心配する気持ちを感じて「いい人」として認定。密室のおかげで嫌いからかわいい男、さらにいい人へとステップアップしていく道明寺であった。

 2人きりの自家用クルーザーでは、当時、泣くほど嫌だったファーストキスを思い出すつくし。道明寺から自分のことをどう思ってるかはっきりさせようと言われ、つきあうことを意識し始める。ここで再びキスされたつくしは、道明寺の子どもっぽい笑顔を見て(不覚にも怒ることを忘れてしまった……)と思っているが、この段階で恋に落ち始めているのは間違いないだろう。ちなみに、美作家の東屋に閉じ込められたときも、つくしはカナダで互いを温めあったときのことを思い出し、道明寺の存在の大きさを再認識している。この時点で2人は周囲に隠れて付き合っているが、隠していることについて道明寺から責められる。その後、つくしは意を決して、F4や親友の優紀に道明寺のことが好きで、付き合っていると宣言するのだ。

 ラストの密室は卒業式の前日、オープン前の水上コテージ。卒業と同時にNYへ行き、4年間は帰ってこない道明寺との2人きりの旅行だ。2人の気持ちは、どんな障害も乗り越えられるほどしっかり固まっている。数々の密室で自分の気持ちを確認し、道明寺への思いを深めてきたつくし。最終回間近ということもあり、このラストの密室で2人は「結ばれる」と期待していた読者も多かっただろう。しかし、クライマックスの密室でさえも2人は静かに眠っただけだった。『花男』の密室はエッチのためにあったのではなく、つくしの気持ちが道明寺へ傾いていく様子をつぶさに見せ、読者の共感を得るための最高の装置として機能していたのだろう。

 文●塩澤真樹(C-side)

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