アジア時間概況
中国の金融引締め観測がどの程度株式市場へ影響するか不透明な部分もあったが、ある程度市場は織り込み済みであったことから、米景気回復期待感を背景に買い優勢の展開となり、序盤の中国市場は堅調な値動きとなっている。
一方、日本225種も底堅い展開へ。為替市場でも中国金融引締め観測の影響が限定的となったことから豪ドルがしぶとさを見せ上昇。連動しユーロも堅調な値動きとなった。また、ドル円も米金利上層を受け、84.00をブレイクしたことから円相場が円安へ振れたことを好感し、機械株をはじめ根強い買いに下支えされた。ただ、上値が限られたところを見ると、中国金融引き締めへの市場の警戒感も根強く、引き続き影響を見極めたいとの思惑を残したまま欧州タイムを迎えようとしている。
本日の主要経済指標
・17:15 スイス:11月生産者・輸入価格
・18:30 英国:11月生産者仕入価格
要人講演等
・26:10 カナダ:カーニーBOC総裁の発言
・27:30 ユーロ圏:トリシェECB総裁の発言
欧州タイムの見通し
今週よりクリスマス休暇に入る市場参加者が徐々に増えることから、積極的な商いに乏しい取引環境となりそうだ。特に今日はアジア時間を見てもそうだが、売買する材料に事欠いている上に、明日14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)、15日にはアイルランド政府が国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)からの850億ユーロの金融支援について、議会承認を求める予定となっており、イベント前の積極的なリスクテイクは避けたいというのが投資家の本音だろう。
そうなると本日の欧米タイムは、ポジション調整や利益確定売り主体の相場となる可能性がある。まず、15日のアイルランドの議会承認と同じ日に実施されるスペインの国債入札を見極めたいとの思惑から、銀行セクターやユーロの上値が重くなるか注目したい。欧州中央銀行(ECB)の国債購入が継続するうちは、アイルランドやポルトガルに対する市場の懸念を幾分か後退させられている。
しかし、先週末の欧州債券市場のように、ECBの購入姿勢に少しでも疑問符がつけば、逃げ足の速い投機資金がすぐに質への逃避へと加速することを市場関係者は確認している。それに加え、今回の国債入札ではスペインの金利が上昇するとの見通しも既に台頭しており、本日の欧州債券市場でそのことが材料視されれば、投資家のリスク回避姿勢が強まり、ドイツ国債との利回りスプレッドが更に拡大する可能性が強まろう。
ユーロドルのレンジは1.30-1.34。現状、ミドルレベルの1.3200を挟んでの展開となっているが、1.3164(12月9日安値)を下抜けるようだと1.30を目指す勢いが増す可能性も出てくるため注視したい。
また、直近の強い米経済指標が景気改善への期待感を強めていることを反映し米金利へ上昇圧力が継続していることも、ユーロ売りを促す要因となり得る。米金融緩和政策を考えれば今回の金利上昇には限界があるとの声も聞かれるが、ドル相場との相関性が指摘されている米2年債は0.628%の水準まで上昇しており、明日の米FOMCまで、短期的にはドルの地合いは底堅く推移する可能性がある点にも注意した方がいいだろう。
一方、欧米株式市場では中国の金融引締め観測の影響や高値警戒感がどの程度資源系セクターへ影響をするかを見極めることが重要になりそうだ。
今回の中国消費者物価指数を受け年内の利上げ観測が強まっており、これ自体は商品市場での売り要因となる可能性がある。そうなれば、高値警戒感の出ている株式(SPX500種はリーマンショック前の水準まで株価が回復、ナスダック指数終値は2007年12月31日以来の高値)では、利益確定売り優勢の展開となる可能性が出てくる。
ただ、既に12月3日には共産党政治局常務委員会が金融引締め政策を穏健的に変えると発表していることに加え、本日は中国人民銀行の李稲葵金融政策委員も『金融引き締めは段階的に行われる』、『金利等の政策ツールについて、当局は強硬な行動はとらないだろう』との認識を示したことから、株式、為替共にヒステリックな反応は見られない。
むしろ直近の同国鉱工業生産が前年比13.3%増となり、経済成長の強さとそれに伴う資源需要の拡大観測をあらためて市場に植え付けることに成功している点に注目したい。本日の中国株式市場やアジア時間の貴金属価格の動向を見ても、中国の金融引き締めへの警戒感より経済成長の方が材料視されている節が感じられるため、資源系セクターを中心に底堅い値動きとなれば、リスクテイクから円相場全体でも底堅い値動きとなるシナリオも浮上するだろう。