2010年で創立60周年を迎えたオリエント。秋冬の新作展示会場のエントランス付近には、オリエントの過去を彩った歴代モデルたちが並べられ、来場者の注目を集めていた。

たとえば、ムーブメントに使われる人工ルビーを、たっぷり100石も使った「オリエント グランプリ 100」や、針が逆回転するというギミックウオッチの「サザンクロス」など、往年のファンにとっては懐かしい逸品・珍品(?)ばかり。機械式時計の醍醐味を感じさせるユニークな商品開発は、このブランドの歴史そのものといっても過言ではなく、2010年の秋冬コレクションにもそんなオリエントらしさ全開の魅力的な新作が出揃った。

往年のヒット作をリメイク

実際にオリエントには「復刻シリーズ」といった、過去のヒット作を現代に蘇らせたコレクションがある。今回、同シリーズの新作としてリメイクされたのが、1964年に誕生した「フラッシュ」だ。ケースの外周をぐるりと覆ったクリスタルには、あらかじめ光が通りやすいように多面カットが施されていて、12時位置にセットされた光源一つで全体が明るくキラキラと輝く。まだ、バッテリーの性能があまり良くなく、そう幾つもランプが使えなかった時代の創意工夫が感じられるようで面白い。今回の復刻モデルには、その光源にLEDが使われているが、デザインやコンセプトは忠実に再現されているという。

アナログ感満点の機械式GMTモデル

オリエントスターの新たなフラッグシップモデル「オリエントスター GMTモデル」

さて、過去ばかりでなく、今回新規に開発された新作にもスポットを当てたい。まず、なんといっても目玉となるのは「オリエントスター GMTモデル」だ。時針とは別に、中央にセットされた赤い針が24時間で1周しながら、第2時間帯を表示できるGMTウオッチ。さらに、2時位置のリューズを操作してダイヤル外周のインナーベゼルを回転させれば、第3時間帯まで表示することが可能。クルマでいうところのMT(マニュアル)車を彷彿させるような、こんなアナログ感たっぷりの時計に男心はくすぐられるものだ。

デザインも精悍そのものといった印象で、文字盤は5層からなる立体的な作り込み。彫刻刀で削りとったようなエッジのきいたラグの作りも特筆モノで、そこにGMT針のレッドカラーが絶妙な差し色となって、時計全体の印象をぐっと引き締める。しかも、これだけの機能とルックスを備えながら、わずか8万円台で買えるというコストパフォーマンスの高さもうれしい限りだ。

限定200本のレーシングモデル

国内200本限定の「オリエント ワールドステージコレクション STIコラボレーション セカンドモデル」

さらに、もう一つの注目作である「STIコラボ限定モデル」の2ndバージョンも見てみよう。ヨーロッパで人気の耐久レースである「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」に参戦したSTIチーム(スバルテクニカインターナショナル)とのコラボモデル第2弾で、国内限定200本の特別仕様。ダイヤルにはレーシングカーなどにも使われるカーボンファイバーがあしらわれており、6時位置にはダッシュボードの燃料計を思わすパワーリザーブの表示付き。また、リューズが通常とは逆の左サイドにあるため、レーサーがハンドリングの際に手首にリューズがあたって邪魔だということもない。

シースルーバックからは、ローターが回転して時を紡ぎ出す精緻なメカムーブメントの動きが堪能できる。シリアルナンバーも付されており、プレミアム感も満点だ。そして、これほど充実した内容でも価格は、なんと4万2,000円。ここでも圧倒的なコストパフォーマンスの高さを見せつけてくれた。

レディスモデルも「品質」「デザイン」「価格」の三位一体

女性向けにも、品質、デザイン、価格のバランスに長けた新作モデルがエントリー。多面カットを施した存在感のあるケースが特徴の「オリエント スリースター キュービック」は、4種類のデザインから選べて各1万6,275円だ。レディスモデルにしては珍しく機械式ムーブメントを搭載しており、パンキッシュなカジュアルウェアにもぴったりな、レトロ&ポップな雰囲気を獲得。また、ハートをモチーフにした人気シリーズの「イオ スイート&スパイシー」からは、シェルダイヤルにハートをあしらった「ハートフル・パワー」が。

女性らしさの象徴であるハートがモチーフの「iO(イオ) スイート&スパイシーII」

さらにブラック×ゴールドのカラーリングでビターに仕上げた「パワー・ラブ・ファイアー」が加えられた。ちなみに、「イオ(iO)」は、オリエントの女性スタッフが部門間の垣根を超えて立ち上げたもの。女性のための、女性によるフェミニンなシリーズで、リューズの形までハートにするというこだわりようだ。クリスマスの贈り物にもぴったりといえる。

iOの新イメージキャラクターは、モデルの大石参月さんに決定

創立60周年の記念モデルがもう1本?

そして、最後にもう一つビッグなお知らせがある。オリエントの創立60周年を記念したアニバーサリーモデルは、すでに今年の春先に3種類も発売された。しかし、記念モデルはそれだけではなかったのである。

もう1本、フラッグシップの「ロイヤル オリエント」をベースにした、スケルトンウオッチの発売が予定されている。ダイヤルの盤面をシースルーにして、彫金加工を施したムーブメントを前面から見せるというスケルトンウオッチは、昔からオリエントが得意とするテーマ。だが、会場に用意されていたサンプルの写真を見る限り、今回の記念モデルでは彫金の仕方がいつもとは異なっていた。ブリッジや地板のカッティングが直線を重視した幾何学的なスタイルで、スケルトンウオッチにつきもののクラシカルな風合いよりも、むしろモダンでクールな仕上がりを予想させる。年末に一部発売の予定があるというからファンは注視してほしい。