SBJ銀行は、Shinhan Bank Japanの略で、韓国の新韓銀行が日本に設立した銀行だ。日本では長年にわたって超低金利が続いており、預金の魅力はほとんどないといっても過言ではない。こうしたなか、「銀行がおもしろくなる。」、「銀行は金利だ。」といった、ちょっと刺激的なキャッチフレーズを打ち出しているのが、SBJ銀行の特徴。果たして、銀行が面白くなるという所以は? SBJ銀行代表取締役社長の宮村智氏にお話を伺った。

SBJ銀行代表取締役社長の宮村智氏

宮村智氏
SBJ銀行代表取締役社長
東京大学法学部卒業。1969年7月 大蔵省入省。1978年6月 ハーヴァード大学ロースクール 法学修士(LLM)取得。経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部 参事官(在パリ)、世界銀行 日本代表理事(在ワシントン)、駐ケニア特命全権大使 兼 駐エリトリア、セーシエル、ルワンダ、ブルンジ特命全権大使(在ナイロビ)、損保ジャパン総合研究所理事長 兼 損保ジャパン顧問などを歴任。高島屋 社外取締役(現職)。

聞き手 : 「銀行がおもしろくなる。」というキャッチフレーズにとても興味を覚えました。どうして銀行が面白くなるのか。まずはそこからお話を伺えればと思います。

宮村 : 答えは簡単です。日本では80年代後半からのバブル経済が崩壊してから、超低金利の状態が続いています。金利が低いままでは、当然のことながら銀行の預金利率も上がりません。今では、1年物の定期預金に預けたところで、満期までに付く利息は、年0.07%程度です。100万円を預けたとしても、ちょっとした手数料を取られてしまったら、それだけで利息は実質的にゼロ以下になってしまいます。こんな状況が続いているのですから、日本の銀行が面白みに欠けるのは、仕方のないことでしょう。

私どもの基本理念、それは「愛される銀行」というものです。そして、利用者の皆様から愛される銀行になるためには、やはり他行に比べて有利な預金利率を提示し、銀行を面白くすることから始めるべきだと考えました。

聞き手 : 実際に、どのくらいの利率を提示しているのですか?

宮村 : 昨年9月14日の開業から昨年末までの期間限定で「日本開業記念円定期預金」を募集しましたが、この時の利率は300万円以上預けていただいた場合、5年物なら年2.0%、1年物でも1.4%という利率を提示させていただきました。

今は上野、横浜支店で新規開店記念円定期預金を募集していますが、その利率は300万円以上なら3年物で年1.4%、1年物で1.2%です。

聞き手 : 親会社である新韓銀行は韓国において、どういう位置づけの銀行なのでしょうか。

宮村 : 総資産は2009年12月期決算時点で304兆ウォン、日本円に換算して23~4兆円規模です。新韓金融グループの株価時価総額は韓国の金融グループのなかではトップですし、サムスンやヒュンダイなど他の財閥系企業などを含めた全韓国企業のランキングでも5位に入るほどの実力を持っています。店舗数は韓国内で約1,000店舗、従業員も1万人を超えています。

このように、韓国内では非常に規模が大きく、かつ著名な企業に育ってきたのですが、韓国内だけに留まっていたのでは、どうしても次の成長戦略を描くことができない。そこで、グローバル展開に次の成長戦略の源泉を求めたのです。そのひとつが、日本国内にあった支店の現地法人化だったのです。

実は、日本に進出してきた歴史は比較的長く、1986年には大阪支店を設立しています。その後、東京、福岡というように店舗を拡大してきました。

聞き手 : 現地法人化した理由は何でしょうか。

宮村 : これまで日本国内で支店展開をしてきたわけですが、あくまでも韓国の銀行の在日支店という位置づけでしたから、日本の預金保険機構に加入できませんでした。それが今回の現地法人化によって、預金保険機構に加入できるようになったので、利用者の方には安心感をご提供できるようになったと思います。それだけ、預金も集めやすくなりました。また、支店の開設も認可制から届出制に変わって容易になりました。

加えて、私どもは日韓経済の架け橋になりたいと考えています。現地法人化を行って、前述したように日本開業記念円定期預金を扱いましたが、この時集まった預金の98%は、日本人のお客様でした。そして、もう一方には旺盛な資金需要を持つ韓国の企業があります。その両者の間を取り持つことによって、日韓両国の架け橋になれると思います。

聞き手 : 高い利率で預金を集める一方、その運用先はどうなるのでしょうか。

宮村 : いろいろな形で日韓関係の架け橋になれればと考えておりますので、運用先も韓国に関連した企業が中心になります。

まずは、収益力の高い在日韓国企業のビジネス。これは、パチンコやゴルフ場といった遊戯業や貸しビル業などが中心になります。その他、韓国から日本に投資している企業への融資も行います。また、韓国国内でも円資金の需要がありますから、それらを開拓していこうと考えています。

韓国は経済がかなりしっかりしていることもあり、旺盛な資金需要があります。日本の高度経済成長期に見られたように、銀行の預貸率は100%を超えている状態です。預貸率というのは、預金の額を貸出の額で割って求められるもので、この数字が100%を超えた場合、預金を上回る貸出があることを意味します。それだけ資金需要が旺盛だということです。

当然、これは日本国内に進出している在日韓国企業にも当てはまることです。そのため、日本の銀行に比べて高めの預金利率を提示しても、十分に採算の取れる運用先に恵まれているのです。

(聞き手 : 鈴木雅光、撮影 : 中村浩二)