東京証券取引所は16日、ビー・エヌ・ピー・パリバ証券会社(BNPパリバ証券)に対し、取引参加者規程第34条第1項第8号の規定に基づき処分を行うとともに、取引参加者規程第19条の規定に基づき業務改善報告書の提出を請求したと発表した。
処分内容は、取引の信義則違反などについては、「取引参加者規程第34条第1項第8号の規定に基づき、過怠金1億円を賦課するとともに、BNPパリバ証券に対して、取引参加者規程第19条の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求する」(東京証券取引所)。
報告徴収命令に対する対応の不備については、「取引参加者規程第34条第1項第8号の規定に基づき、過怠金3,000万円を賦課するとともに、BNPパリバ証券に対して、取引参加者規程第19条の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求する」。
「特定の上場金融商品の相場を固定させる目的をもって、買付けの申込みなどを行う行為」に対する処分は、「取引参加者規程第34条第1項第8号の規定に基づき、過怠金5,000万円を賦課するとともに、BNPパリバ証券に対して、取引参加者規程第19条の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求する」としている。
東京証券取引所によると、BNPパリバ証券は2008年当時、東証第一部に上場していた同社の顧客(その後上場廃止)が、資金繰りに窮するようになり、同社資本市場ソリューション部(CMS部)の営業担当者に、同年6月末までに、一定の資金が必要であることなど資金調達ニーズの切迫性を伝え、その調達の依頼を行った。BNPパリバ証券は、この顧客からの求めに応じ、2008年6月、CMS部が顧客に対し資金調達の提案を行った。
その資金調達の方法とは、(1)顧客が、BNP Paribas S.A.を割当先として、転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行する、(2)顧客は、BNP Paribas S.A.との間で締結するスワップ契約に基づき、CBの発行による手取金に相当する額をBNP Paribas S.A.に支払い、顧客の発行する株式の株価などに応じて定まる時期に、株価などによって変動する額を、BNP Paribas S.A.から受領する、というものだった。
顧客がこの資金調達に関して法定開示書類を提出するなどに当たっては、転換社債型新株予約権付社債(CB)発行による調達額の全額が、直ちに顧客の債務の返済に充当できるわけではないことを投資家が自ら推察し、投資判断をすることができる程度まで、この件のスワップ契約の内容を引用して記載すべきであり、BNPパリバ証券は、顧客に対し、そうした適切な情報開示を行うよう助言すべき立場にあった。
だが、CMS部の営業担当者は「グループ全体としての利益確保を優先させ、顧客に対し、スワップ契約に関する情報を開示するよう助言せず、それどころか、開示しないよう要請した」(東京証券取引所)。その際、CBの引受審査担当者も同じCMS部に在籍していたことなどにより、営業担当者への内部牽制は全く機能しなかったという。
BNPパリバ証券の経営陣や内部管理部門は、利益相反などの問題を適切に管理する観点から、CMS部の不適切な業務運営を指導・監督する立場にあった。だが、営業部門の独断専行のおそれを防止するための経営管理態勢が欠如していたことに加え、「コンプライアンス部など内部管理部門による十分な牽制機能が果たされていなかった」(東京証券取引所)。さらに、「資金調達案件の実行に関する最終的な意思決定機関においても、スワップ契約に関する情報の開示といった重要な点について十分な議論が行われなかった」(同)という。
顧客は、「2010年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ」を開示し、また、法定開示書類を提出したが、そのいずれにおいても、スワップ契約に関する情報は記載されなかった。こうした中、BNPパリバ証券は、スワップ契約に係る情報が開示されていない中で、開示されていない情報を知りながら、東証市場において、2008年6月27日以降、当該顧客が発行する株式の売買を行った。同社の経営陣や内部管理部門は、法令等遵守の観点から、取引の適切性についても検討すべき立場にあったが、「当時はその認識が不十分であった」(東京証券取引所)。
東京証券取引所では、これら一連の行為について、「取引参加者規程第42条第2号に定める『有価証券の売買(中略)に関し、詐欺的な行為、不信若しくは不穏当な行為又は著しく不注意若しくは怠慢な事務処理を行うこと』に該当するとともに、同条柱書に定める『当取引所の市場の運営にかんがみて、東京証券取引所の信用を失墜し、又は当取引所若しくは当取引所の取引参加者に対する信義に背反する行為』に該当するものと認められる」と認定。
また、「金融商品取引法第38条第6号に基づいて金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第16号に規定される『法人関係情報に基づいて、自己の計算において当該法人関係情報に係る有価証券の売買その他の取引等(中略)をする行為』に該当するものと認められる」としている。