ブルゴーニュ。フランスきってのワイン銘醸地として、その名は知っている人は多いだろう。ブルゴーニュ地方を日本に例えると、方角的には少し違うが、シャブリ地区は北海道、そこから80km南東からまっすぐ南に伸びるコート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌ、コート・シャロネイズ、マコネ地区はさしずめ本州といったところだろうか。今回はその"本州部分"を訪れた際のお話をするとしよう。
到着したのは夜だった。ブルゴーニュの"本州"の北限、かつてのブルゴーニュ公国の首都ディジョンから国道74号線を車で南下すると、ヘッドライトが照らし出す標識や看板などからかつてソムリエ試験のときに勉強した村名を教科書通り順番に通過するのが確認できる。道が空いていることもあるが、小さな村なら1分もかからずに通り越してしまう。「おぉ! 」と感動する間もない。
この地域では、渋滞に巻き込まれることは滅多にない。あるとしたら、それは信号待ちである。ディジョンから40kmほど南にあるボーヌの町までの間で信号がある村はマルサネ(ここは工業地帯でもあるので)とジュブレ・シャンベルタン、ニュイ・サン・ジョルジュだけらしい。
わずか数百人という人口のこれらの村々が世界に名だたるワインを産出するブルゴーニュ。この記事を読み進めていただければ、この"小さきモンスター"の威力を知ることになる。
南北100kmにわたって帯状に広がるブルゴーニュ
シャブリに関しては、以前にも詳細記事を掲載しているので、シャブリ以外のブルゴーニュの地理関係を軽く説明しておこう。
シャブリに関する記事
・「とことん詳しく、シャブリワイン - フランスを代表する白ワインは意外にも合わせる料理を選ばない」
・「ビオワインを正しく語れますか? - フランス・シャブリのビオ事情を通して自然派ワインを知る」
・「テロワールではなく、造り手に焦点を絞ったワイン考 - シャブリの場合」
先に述べたように、ブルゴーニュ地方はディジョンからほぼ真南にまっすぐ帯状に細長く伸びている。とりわけコート・ドール県(訳すと黄金丘陵。なんという響き! )はかの有名なロマネ・コンティを造りだすヴォーヌ・ロマネ村を含むコート・ド・ニュイ地区、白の最高峰と呼ばれるモンラッシェやムルソーなどを産出するコート・ド・ボーヌ地区に分かれている。ブルゴーニュワイン好きにとってはまさに"聖地"ともいえる地区である。造られるワインはコート・ド・ニュイ地区が赤89%・白11%、コート・ド・ボーヌ地区は赤白ほぼ半分の割合であるが赤が若干優勢。
コート・ド・ボーヌ地区からさらに南に下ると、今度はコート・シャロネーズ地区に入る。ここにはグラン・クリュ(特級畑)はないが、その代わりにコストパフォーマンスに優れたワインを多数産出する。また、この地区のブーズロンという村では、シャルドネの他にアリゴテという品種で白ワインを造っていて、こちらもやはりリーズナブルで質の高いワインである。赤白の割合はほぼ半分だが、白のほうがやや優勢。
コート・シャロネーズ地区のさらに南にはマコネ地区。ここで造られるワインの90%は協同組合によるものだ。コート・ドールのような高級ワインはないものの、年々質はアップしていて、ブルゴーニュでもっともコストパフォーマンスがいいと絶賛する人もいるほどだ。また、近年になって需要が増大しているクレマン・ド・ブルゴーニュ(スパークリングワイン)の生産が比較的多い地区でもある。赤白の比率は赤15%・白85%。
そんな南北100kmほどのブルゴーニュ。その中でもとりわけ印象深かった村や造り手、畑、ワインを次ページから紹介しよう。