「生身の人間対ガンダム」とインディ・パ 本郷喜千代表取締役がいうように、Dynamic ARMS FXは徹底的に「人間の弱い心」を排除したクールな売買システムだ。前回紹介したようにテクニカル分析などを一切排除して、市場を統計学的に徹底して見直すことからアルゴリズムが構築されている。

そこから得られた結論は、「変動幅は予測できる」というものだ。将来の市場価格を予想することは極めて難しい。しかし、変動幅を予測することはある程度できる。「市場というのは変動幅が大きくなり始めるとしばらくその状態が続き、変動幅が小さくなるとしばらくその状態が続くという性質があることがわかりました」(インディ・パ 石崎文雄チーフテクノロジーオフィサー)。

つまり、市場には静と動の時期があり、静の時期には損をしないように頭を下げてやりすごし、動の時期に大きく利益をとっていく。これがDynamic ARMSの基本だ。荒れ場に強い売買システムとも言える。「たとえば、今年の実績でも7月8月は為替相場が比較的安定していたので、Dynamic ARMS FXの運用成績もそうずば抜けたものではありませんでした。でも9月以降相場が乱高下し始め、Dynamic ARMS FXの運用成績はかなり上向いてきています」(本郷)。ひまわり証券サイト内にDynamic ARMS FXの資産曲線が掲載されているので、これと相場状況を重ね合わせてみるとよくわかるだろう。

2003年4月~2009年5月までの価格データよりインディ・パが検証したもの。検証結果は過去のデータであり、将来の実績及び確実な利益を保証するものではない

変動率の予測が基本だといっても、では具体的にどのタイミングで売るのか、買うのかという判断をするアルゴリズムはもちろん人間が考えなければならない。Dynamic ARMS FXではこのアルゴリズムでも徹底的に、人間の弱い心を排除している。どんな売買プログラムでも、ある程度完成してくると、過去の実際の市場データを入力してみて、どの程度の成績になるかというバックテストを行う。ところがここに罠があるのだ。「よくありがちなのは、バックテストの結果に合わせてアルゴリズムを修正していってしまう過剰最適化です」(石崎)。バックテストの結果に合わせて、アルゴリズムを修正していくと、ときとして「過去のデータなら利益ができるが、将来はまったくわからない」アルゴリズムに仕上がっていってしまう。

「生存バイアスが生じてくるからです」(石崎)。売買プログラムに使われるアルゴリズムはひとつではなく、複数のアルゴリズムが複雑に組み合わさっている。バックテストの結果をよくしようとしすぎると、過去の市場でたまたまうまく機能したアルゴリズムが残され、たまたまうまく機能しなかったアルゴリズムが削除されていってしまう。つまり、恐竜のようなものだ。ジュラ紀の気候に過剰適応した恐竜は、その時代は地球の覇者として振る舞えたが、気候が変わったらひとたまりもなく絶滅していった。バックテストは時代遅れの恐竜を生み出しかねないのだ。

Dynamic ARMS FXはここでも石崎氏の着想がうまく利いている。Dynamic ARMS FXの基本的な考え方は「変動率を予測する」というシンプルなもので、こういうパターンになったら買い、こういうパターンになったら売りというようなテクニカル分析流の複雑なルールはない。バックテストの結果、パラメーターなどの微調整は行うが、アルゴリズムそのものを大きくいじるわけではない。あくまでも理論が優先で、生存バイアスの入りこむ余地がない。

過剰最適化した売買プログラムが実績を上げられないのは、市場が大きく変化するからだ。温暖なジュラ紀があったかと思うと、極端に寒冷な氷河期がやってくる。市場はいつも気まぐれに動いていく。Dynamic ARMS FXのもうひとつの特徴が、この市場の変化に対応するために自己回帰システムを内蔵していることだ。ARMSというネーミングは、Auto Regressive Model Systemの略。自己回帰システムは、自分で自分の調整を自律的に行っていく。Dynamic ARMS FXは週に一度、パラメーターの微調整を自分で行い、市場の変化に追従していく。しかも、半年以上前の市場データは捨ててしまい、直近のデータから未来の市場変化を読んでいく。同じ荒れ場といっても、大きな荒れ場がくるのか小さな荒れ場がくるのを事前に察知し、市場の変化を的確に読んでいく。Dynamic ARMS FXは過去にとらわれない、将来だけを見据えている。

このような特長をもったDynamic ARMS FXは、荒れ場に強い。シンプルで根拠のあるアルゴリズムだけを使い、人間の脆い心を一切排除している。そして、落ち着いた相場の時期は静かに見守り、荒れ場がやってくると大きく利益を確保していく。「システムトレードの最大の弱点は、運用する人の精神面の弱さ」と考える本郷氏の信念と、「市場データの中にこそ答えが隠されている」という着想をもった石崎氏が出会ったときに、Dynamic ARMS FXは生まれた。人が投資を決断するときはなにかを信じて行う。それはファンドマネージャーの人物だったり、投資先の企業の将来だったり、さまざまだ。Dynamic ARMS FXを使っての投資であれば、統計理論を信じて投資することになる。正確にいえば、統計科学なのだから、信じる、信じないではなく、理解するかどうかだ。Dynamic ARMS FXは、投資を人間のヤマ勘から科学に変えたことだけは確かだ。

写真右から本郷氏、石崎氏