仏食品会社ダノングループの非営利学術組織「ダノン健康・栄養普及協会」はこのほど、報道関係者を対象にセミナー「栄養知識の偏りにみる現代女性の健康問題」を開催した。同セミナーでは、同協会より同日発表された「現代女性の栄養知識調査」の調査結果をもとに、栄養に対する現代女性の意識と栄養摂取状況との関係性が語られた。
厚生労働省によれば、カルシウムの1日あたりの必要摂取量は20~50代の女性で600~700mgとされている。しかし、今回の調査(2009年3月、全国の20~50代の女性722人を対象に実施)によると、1日に必要なカルシウムの摂取量について77.1%が「わからない」と回答。さらに、設問に答えた22.9%のうちの半分が必要摂取量の600mgを下回る回答をしており、正しい認識を持つ女性は全体のわずか8.7%という低い数値にとどまった。
また同調査では、日々の食品摂取状況や食習慣などのチェック表をもとにした、カルシウム摂取状況の簡易評価が行われた。その結果、全体の99.2%が「カルシウム不足」となり、45.7%が「まったく足りない」と判定された。一方で、カルシウム摂取に対する自己認識では「まったく摂れていない」「やや不足している」と答えたのは52.8%で、実際の摂取状況と認識には乖離が見られた。
こうした調査結果をふまえ、管理栄養士の山口律奈氏は同氏の基調講演のなかで、「食育というとなにか子ども向けのような響きがあるが、正しい栄養知識を身に付けることは大人の女性のたしなみ」と喚起。自ら栄養学講座を開催する山口氏は、受講生によくある思い込みとして、(1)植物性食品は○、動物性食品は× (2)健康と美容に大切なのはビタミン。ビタミンは野菜に多く含まれる(3)コレステロールは低ければ低いほどよい、の3点を挙げた。山口氏は「例えばカップラーメンを1年に1回食べるというのは体によくも悪くもないが、毎食食べるとなれば問題。体によい食品・悪い食品ではなく、あるのは体によい食習慣と悪い食習慣」と強調した。
また、カルシウムの摂取に関しては、閉経後に骨量が急激に減少すると言われている女性の場合、特に注意が必要だという。今回の調査対象の女性のうち87.4%が閉経後の骨量の減少について認識をしていたが、"子どもに摂らせたい栄養素"としてカルシウムを1位に挙げた人が47.1%であったのに対して、"自分が摂りたい栄養素"として1位にカルシウムを挙げた人は、コラーゲンの12.9%を下回る10.5%だった。
この結果について、「栄養知識調査からみるカルシウム摂取の重要性」と題した講義を行った女子栄養大学教授の上西一弘氏は、女性の骨粗しょう症のリスクの高さを危惧したうえで、「成長期にカルシウムを多く摂取して、若いうちにできるだけ貯金して最大骨量を上げておくことが大切。成長期を過ぎてからは、骨量の減少をできるだけ抑えられるようにきちんと食べて体を動かすこと。できれば自分の骨密度を把握してほしい」と、対策をアドバイスした。
カルシウムは、摂取量600mgのうち体内に吸収されるのは平均150mgと、わずか25%の吸収率と言われている。ただし、上西氏によるとカルシウムは単独で吸収されるわけではなく、食習慣や生活習慣にも左右され、人によって20~60%程度の開きがあるという。そこで「摂取量が不足しているのであれば、吸収率を上げればいい」とする上西氏は、吸収性の高いカルシウムとして、CPP(カゼインホスホペプチド)、CCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム)を紹介したほか、カルシウムやマグネシウムの吸収を促す食品として、フラクトオリゴ糖や乳果オリゴ糖を挙げた。
同セミナーの最後に、上西氏は「改めて女性のカルシウム不足が明らかになっただけでなく、正しい知識やそれを得る教育機会が不足しているという課題が見えた」と総括。今後も同協会等の活動を通じて、正しい情報を発信し続ける必要性を訴えた。