富士通研究所は4月17日、プレス向けに研究開発戦略、および研究中の技術に関する説明会を開催した。

川崎市にある富士通研究所 本社

富士通研究所は、現在従業員約1500名(日本約1300名、海外約200名)、予算規模約350億円で、サービス&ソリューション、システム、ヒューマンセントリック、ネットワーク、プラットフォームテクノロジーなどの分野を中心に研究を行っている。ただ、半導体の分社化、ハードディスク事業の売却などの事業再編により、昨年より規模は1割減となっているという。

富士通研究所の概要

ヒューマンセントリックとは、すべてをつなぐことで価値を生み出し、その価値で人々に感動、発見、信頼と発展を提供するという、人間を中心としたネットワーク社会の実現を目指す分野だ。これは、同社が掲げる10年ビジョンでもある。

具体的には、十分に利用されていないリアルワールドデータをセンサーで集めることにより、ITがより人に近くなり、人の助けになり、新たな感動つむぎだすような社会の実現を目指す。

富士通研究所のフォーカス領域

富士通研究所 代表取締役社長 村野和雄氏

今年の6月で就任5年を迎える同社社長 村野和雄氏は「20世紀から21世紀に変わり、研究所のやり方も変えていかなければならない。20世紀はサイエンスとエンジニアリングが統合されて、爆発的な技術革命をもたらしたが、21世紀は研究をiモードやGoogleのようなビジネスモデルにつなげていかなければならない。また、コンプライアンスや環境など、社会的責任への意識も高めていく必要がある。こういったことができてこそ、21世紀型の富士通研究所ができる」と述べた。

今後の主力事業の将来に対する研究では、簡単・省電力をキーワードにブレードサーバ向けの仮想化、運用管理の簡素化、高速インタコネクト技術、次世代の携帯向け通信方式であるLTEのほか、クラウドビジネス向けの仮想プラットフォームを実現する要素技術の開発、システム向けデバイス差異化技術の提供などに注力していくという。

主力事業の将来技術に対する研究

ブレードサーバ向けの高速インタコネクト技術では、10GbitイーサですべてのIT機器を統合すること(ALL-IP戦略)を目指す。具体的には、ブレード内のスイッチやサーバ同士を接続するバックプレーンにおいて、10Gシリアルで直接駆動を実現。高速化と消費電力の低減(従来比で半減)を実現する。なお、富士通によればこの技術の実現は業界初だという。

高速インタコネクト技術

LTEは、現在の3.5Gの次の世代IMT-Advanced(4G)へのつなぎ役として期待されている技術ということで、富士通ではこの技術により来年2010年には、商業運用を開始し、100Mbpsの速度を実現したい考えだ。

富士通ではすでにドコモとの共同実証実験を札幌で行っており、最大240Mbpsのスループットを実証したという。ただ、ビルの陰など場所によってスループットが異なるという課題があるため、携帯端末ごとに送る量や質を動的に変化させる最適スケジューラ、隣接する基地局の電波干渉を防ぐために相互に周波数を切り替えるFFR(Fractional Frequency Reuse)、基地局以外にリレーステーションを設けるなどしてこの問題を解決し、実運用に備えたい考えだ。

アクセス系データ速度の進展

セル内スループットの均質化技術