サッポロビールが6月4日に発売した新ジャンルのビール系飲料「麦とホップ」。こだわりの大麦原料とホップだけを使用し、同社の発泡酒に比べて熟成期間の基準を3割長くしたという長期熟成製法で、"ビールと間違う旨さ"を追求した商品だ。こちら、売れ行きが好調で、年内の販売目標数は当初300万函(大瓶換算)だったが、550万函に上方修正した。同社にとって新ジャンルの柱である「ドラフトワン」の販売量は昨年1年間で1,200万函である。「麦とホップ」の約半年で550万函という数字は、これに匹敵する。そこでここからは、開発秘話を中心に、ブランド戦略も含めた"麦とホップ裏話"を皆さんにお届けする。

新ジャンルのビール系飲料「麦とホップ」

田村正和さん起用の理由

サッポロビールマーケティング本部サッポロブランド戦略部第2ブランドグループ課長代理の吉田直樹さん

お話していただくのは、サッポロビールマーケティング本部新価値開発部シニアマネージャー古林秀彦さんと、マーケティング本部サッポロブランド戦略部第2ブランドグループ課長代理の吉田直樹さんだ。商品開発にたずさわったのが古林さん、販売促進を担当したのが吉田さんになる。

――田村正和さんの「ビール歴44年。不覚にも、間違えました」というCMが非常に印象的ですね。

吉田さん「田村さんはビール党で、ビールをこよなく愛していらっしゃいます。その田村さんでさえビールと思ってゴクゴク飲めてしまう、高品質の商品であることを伝えようと思いました」。

田村正和さんのコメントが印象的な「麦とホップ」のCM

――なぜ、田村さんを起用したのですか?

吉田さん「これまでの新ジャンルは、若いタレントさんやお笑い芸人を起用したCMが中心でした。しかし今回の商品は、違いのわかる世代である40代をターゲットにしています。そこで説得力のある方を起用しようと思い、田村さんになりました」。

――これまでにサッポロビールのCMに田村さんが出演なさったことは?

吉田さん「1985年、『ホワイトブランデー氷彩』のCMにご出演いただいております。今回は、実に23年ぶりの出演となります」。

ビールと同じ味わいを新ジャンルで表現

サッポロビールマーケティング本部新価値開発部シニアマネージャー古林秀彦さん

――さて、商品の話に入っていきますが、泡立ちも豊かでビールと見紛う出来映えですね。

古林さん「これまで新ジャンルというと、ビールの味を目指しつつも、一般的には『ビールと別物』という認識だったと思います。ビールとは全く違う原料を使って造ってきましたからね。しかし『麦とホップ』はその名の通り麦とホップの割合が高く、泡立ちもビールと何ら変わりません。お恥ずかしい話でもあるのですが、弊社の社員でブラインドテイスティングをしたところ、ビールと間違ってしまう者がいたほどです(苦笑)」。

――1,000名へのモニターアンケートでも、85%が「ビールと間違えてしまう」と答え、99%が「おいしい」と認めたそうですね。これほどの商品が、どのようにして誕生したのか興味があります。

古林さん「2006年秋に『麦とホップ』開発プロジェクト企画がスタートしているのですが、当時、新ジャンルはすっきりタイプの商品しかありませんでした。そういった中、かねてよりビールに近い味わいを求める声がありました。何度アンケートをしても、一定割合の方がそのように回答していました。そういった声から生まれた商品です」。

――新ジャンルでビールと同じ味わいを実現するというのは難しかったのではないでしょうか。

古林さん「これまで新ジャンルでは軽い味わい、爽快さを実現するために液糖を使っていました。しかし、これだとコクや味の厚みが足りない。そこで、ビールと同じ原料の使用を決めました」。

静岡・焼津にあるサッポロビールの開発センター。ここで「麦とホップ」も開発された

――商品名もストレートに「麦とホップ」ですね。

古林さん「候補は500くらいありましたが、コンセプトがはっきりと見えていたので、早い段階で商品名は決まりました」。

――パッケージに長期熟成製法とありますね。

古林さん「麦芽とホップでつくると、どうしても"もっさり"とした味になってしまう。そこで、従来より3割長い期間熟成させることに。結果、角が取れてビールらしい味にたどり着きました」。

――「エビスビール」も長期熟成ですね。

古林さん「『麦とホップ』に『エビス』開発で培ったノウハウが生かされていることは確かです。エビスがあったからこそ、麦とホップが誕生したといっても過言ではありません」。

「麦とホップ」はしっかりとした味わいが好きなビール党にも満足できるタイプで、新しいファンを増やしている。9月からは田村正和さんのCMも新シリーズが始まる予定という。懐にもやさしい「麦とホップ」。サッポロビールにとって、新ジャンルの第2の柱となることは間違いないようだ。