ロゼッタストーン・ジャパンはこのほど、メディアカンファレンスを開催した。語学学習用ソフトウェア「ロゼッタワールド」のプレゼンテーションが行われたほか、脳科学者の池谷裕二氏が「脳のしくみに見る外国語を学ぶ方法」と題した講演を行い、英語学習の効果的な方法について紹介した。
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ロゼッタワールド 英語ソフト |
「ロゼッタワールド」は、世界177カ国で使用されている語学学習用ソフトウェア。コロンビア大学など1万校以上の学習機関をはじめ、NASAや国際連合などの政府・公共機関や、BMW、インテルなどのグローバル企業などにも採用されている。
特長は、同社独自のシステム「ダイナミックイマージョンメソッド」。ネイティブスピーカーによる発音を、日常生活の映像に結びつけることにより、翻訳を介さずに言葉の意味を直接理解することができるという。なお、同ソフトにはネイティブ・スピーカーによる8,000を超える音声、テキスト、画像が収録されているとのことだ。
また、同ソフトは「リスニング」「会話」「読解」「作文」の4つの学習方法を軸に構成されている。会話の学習では、インカム(マイクとヘッドホン)をつけてパソコンと対話する形式で行う。自分の声を録音・再生してネイティブスピーカーと聞き比べたり、声紋やトーンのグラフを見ながら自分の発音を細かく分析することも可能。たしかに、1人で練習していると正しい発音かどうかの判断が難しいが、客観的な判断を下してくれるので自分の弱点もよくわかる。
さらに、自分の目標にあった学習を行うことができる「マイコース」や最適な時点で復習が行われるようにスケジュールが設定される「アダプティブ・リコール」なども用意され、学習環境を支援するとした。ロゼッタストーン・ジャパン 代表取締役社長 塩濱剛治氏は「日本人がさまざまな言語を習得することにより、もっと国際的に活躍できるためのサポートをしていきたい」と語った。
外国語は英語や中国語、スペイン語のほか、アラビア語やパシュトー語などを含む30種類の言語が用意されている。これは「全世界の人口の90%以上をカバーする」(同社)。同ソフトの対象年齢は、パソコンが使える全ユーザー。目安としては6才からだが、マウスさえ使えれば、3才の子供でも使用できる簡単な操作方法となっているという。学生、社会人だけではなく、子ども用の自宅学習ツールとしても活躍してくれそうだ。料金は1万4,800円から。
また同日には、脳科学者の池谷裕二氏が、著書である『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』を紹介。同氏の留学経験などから編み出された13の発音法則を使ったカタカナ英語を提案した。
池谷裕二
脳科学者
東京大学 大学院薬学系研究科 准教授
海馬の研究を通じて、脳の健康や老化について探求している。
主な著書に『海馬』(新潮文庫・糸井重里氏との共著)、『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)、『進化しすぎた脳』(朝日出版社)など
「ジュマインデファイオウペナドア?」
さて、これは何を言っているかわかるだろうか。正解は「Do you mind if I open the door? 」だ。ちなみに、「アイワニュルペクミアパテオポー?」は、「I want you to pick me up at the airport? 」となる。カンファレンスの会場では大胆なカタカナ発音に笑いも起きたが、「これでけっこう通じるようになるんですよ(笑)」と池谷氏は説明。気になる方はぜひ同書を書店で手にとってみていただきたい。
池谷氏は、日本人の話す発音が何故外国人にとって聞き取りにくいのかについて、こう説明した。「日本人が話す英語は、Japanese(日本語)とEnglish(英語)が融合された『ジャングリッシュ』と呼ばれ、通じないことが多いのです。その理由のひとつに、発音の『マグネット効果』が挙げられます。外国語の音韻が母国語のいずれかの音に飲み込まれてしまうことを『マグネット効果』と呼びます。RとLを聞き分けられないのがその一例で、RとLを区別する発音がない日本語では、2つの発音とも『ラ行』に同化されてしまうのです」。
また、幼児期に外国語学習を始めない限り、ネイティブが話すように流暢に発音することは難しいといわれている。それは、学習する際の脳の作用が変化するからと同氏。「外国語を学ぶのは幼少時代は"獲得"、大人になってからは"習得"という全く違う脳の作用によるものなのです。よく、英会話学校のCMなどで"赤ちゃんが学ぶように外国語を学ぼう"といったニュアンスのキャッチフレーズを耳にしますが、それは脳科学的には考えられません。幼少時代に"獲得"した脳は、母国語と外国語を使用するときに同じ回路を使用するのに対し、成人後に"習得"した脳では、違う回路を使うようになるからです」。
講演の最後に同氏は「言葉は、その国の文化に属したコミュニケーションツール。もちろん、外国語の習得も重要ですが、私は日本文化が好きだから日本の言語も鍛錬してきたい」と強調した。